「お金のこと、周りの人より苦手かも……」。そう思ったこと、ありませんか?
「計画的に貯金しよう!」という意思はあるのに、できない。というか、気づくと必要ないモノを買ってしまう……など。こういったお金の困りごとは、あなたが怠けているからではなく、性格のせいでもなく、もしかしたら「脳の仕組み」のせいかもしれません。
この連載では、年間100世帯以上の相談にのっている発達障害専門のFPで自身もADHD当事者である『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が、お金について解説します。
発達障害の人も、そうじゃない人にも役立つヒントが満載です。

※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

「老後資金の積立」をやっているADHDの人は19.6%。では「非ADHDの人」は何%?Photo: Adobe Stock

ADHDの人の、2つの意思決定スタイル 

 前回の記事でもお伝えしたとおり、ADHDとお金の相性の悪さは、気のせいではありません。
 2020年のとある調査[1]では、

成人ADHDは、
「避ける」「その場で決める」という不利な意思決定スタイルを使いがちで、
貯金や、年金のための積立が少ない。

 ことが示されました。
「避ける」は判断を先送りにしがちということ。
「その場で決める」は熟考せずにスピード優先の意思決定ということです。

 ADHDの人は「なかなか決めない」か、「すぐに決めてしまう」という極端な意思決定の人が多く、「決め方の癖」も家計全体に影響を与えている、という示唆です。

老後資金にも影響が出ている?

 また「貯め方」にも影響が出ています。
 この調査では、

老後資金を積み立てていたのは、ADHD群19.6%に対し、非ADHD群は41.5%

 という結果が出ています。「将来のために今のうちに準備する」という行動に移すのが苦手な構図が数字にも現れています。
 何がそうさせているのでしょうか。

 この調査の分析では、

ADHDは重要なファクターの1つではあるものの、
ADHDだけの話ではなく、
性格×気分×環境の掛け算で「避ける」or「即決」が強まり、
結果として「貯めない/貯まらない」につながる

 と言及しており、ADHDは環境等によってその特性が悪いほうに出やすいことが示されていました。
 確かに、ADHDは両極端な人が多いです。今すぐ決めるか、それともずっと決めないか。ちょうどよく熟慮して結論を出すのが苦手な人が多いです。
 これは単純なあるあるではなく証明されていることなんです。

じゃあ、どうしたらいいの?

 とはいえお金は、管理しながら上手に付き合っていかなければなりません。

決定を避ける」人の場合は締切を決める、人を巻き込むことが大切です。
 あとから考えよう、時間ができたらやろうでは永遠にその時はやってきません。
 1週間後までにやったことを報告する相手を決めたり、誰かと一緒にやったりといった、意志決定を先延ばしにしない工夫が大切です。

その場で決める」人の場合は冷却時間を設けるなど、物理的にすぐに決断できない仕組みをつくることが大切です。
 例えばクレジットカードや現金を極力持たずに外出したり、ネットショッピングではカートに入れて24時間は待つようにします。

 永遠の後回しor即断即決。
 あなたはどちらが当てはまりますか?
 他にもいい工夫があればぜひ教えてください!

(本記事は、『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が特別に書き下ろしたものです。)