彼らはスポーツや文化交流の名目で人員を送り込むだけでなく、「公用パスポート」を所持させて入国させることが多くあります。

 外交官が持つ「外交パスポート」には不逮捕特権などがありますが、公用パスポートにはそこまでの権利はありません。それでも、国家が関与する人物であるというだけで、一般の旅行者よりも丁重に扱われるのが実態です。

スパイは情報をアナログで受け渡す

 2025年開催の大阪・関西万博のように多国籍の来訪者が集中するイベントも、スパイにとっては格好のチャンスです。

え、こんなところで?日本で暗躍するスパイが機密文書をやりとりする「まさかの場所」開催中の大阪・関西万博。閉幕まで1カ月を切り、入場者数は増加している Photo:PIXTA

「大阪に行く必要がある」

「現地で誰かと接触する必要がある」

 こうした目的を持ってやってくる人物がいても、イベントの喧騒に紛れてしまえば、周囲の警戒も薄れます。

 また、最近では、スパイの世界でも「アナログ回帰」が進んでいます。情報機関同士が互いにサイバー攻撃を仕掛ける中で、「ネットワークは見られている」という前提で動いているのです。自分たちが他国の通信を傍受している以上、自分たちも傍受されているはずだという前提ですね。そこで、むしろ昔ながらの「手紙」や「デッドドロップ」などのアナログな方法が重宝されているのです。

「デッドドロップ」とは、指定された場所に小型の容器に入れた書類などを埋めて、別のスパイが時間差でそれを回収する手法のことです。仮にAという人物が物品を埋め、Bが回収するのであれば、同時に現場にいる必要はありませんから、発覚リスクが下がるのです。