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パズドラ大ヒットの秘密はビジネスモデルの進化
コンプガチャ後の荒野を再生する家庭用機の精神
――ソーシャルゲーム・バブル崩壊後の展望【後編】

石島照代 [ジャーナリスト]
【第39回】 2013年6月14日
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 サービス業の代表に、ホテルビジネスがある。世界有数の高級ホテルを思い浮かべてほしい。有料サービス付きロビー、レストラン、ルームサービス、ビジネスセンター…さまざまなところに、客が部屋代以外にもお金を払い続ける仕掛けがある。

 いわゆるソーシャルゲームも、このビジネスモデルに近い構造になっている。つまり、ソーシャルゲームビジネスは、コンテンツ業ではなくサービス業として考えた方が正しいのだろう。いわば、固定宿泊費が発生しないホテルとでも言えばいいだろうか。ちなみに、ある会社でソーシャルゲーム運営に携わっている執行役員は「ソーシャルゲームはネットカフェみたいなもの」と言っていたので、あながち間違いではないだろう。

 同じようなビジネス戦略を持っているのに、なぜ高級ホテルは歓迎され、ソーシャルゲームは過消費で文句を言われるのか。消費者の感情を分けるのは、ホスピタリティの有無だろう。ゲーム業界でも、その昔このホスピタリティを重視していた社長がいた。旧ナムコ創業者の中村雅哉氏である。中村氏は「エンターテインメントビジネスとは、人を喜ばせて儲けるビジネスモデルである」が口癖だったが、家庭用ゲーム、つまりコンシューマー業界は元々このホスピタリティを内包していたのだ。

焼畑農業で焼かれた土地は、
ホスピタリティによって再生へと向かう

 そして、ソーシャルゲームバブルは崩壊した。小山准教授が指摘したとおり、結局ソーシャルゲームビジネスは「焼畑農業」でしかなかった(『自己責任論の下に過消費を誘発する焼畑ビジネスモデルに明日は創れるか――ソーシャルゲームの何が問題か【前編】 』)。焼畑農業のために焼かれた地は、ソーシャルゲームバブル崩壊後、結局そのまま放置されるのだろうか。だが待ってほしい。本当の焼畑農業で焼かれた土地は、植物が芽吹いて再生へと向かうものなのだ。

 ただし、その黒く焼け焦げた土地では、以前コンプガチャで用いられたような激しい心理的操作によるビジネスはできなくなるだろう。なぜなら、「ソーシャルゲームはタダで遊ぶもので、課金する人は愚か」と学んだ消費者のほとんどは、どんなに心理的にあおられても、お金を大量に消費することに抵抗感を覚えるはずだからだ。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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