人間関係は「ビリヤードの玉」のようなもの

私は、人間をビリヤード台の上を転がる「玉」のようなものだと考えています。

広い世界の中で、人間はそれぞれが思うままに、自由に動き回っています。ビリヤードの玉が、たまたま寄り添って一緒に動いているときが、いわゆる「仲が良い」状態です。しかし、それぞれの玉はあくまで自由に動いているため、なにかのきっかけで離れることもあれば、また別の機会に近づくこともあります。

重要なのは、2つの玉が意図してくっついているわけではない、ということです。すべては「たまたま」なのです。ですから、なんらかの弾みで角度が変わり離れていったり、ときにはぶつかって反発し合ったりすることも、ごく自然に起こり得ます

「私」と「相手」がいるだけ、と考える楽さ

そこに「友達だから」「恋人だから」といった枠をはめて固定したレールを敷いてしまうと、かえって不自由になり、いろんなチャンスを逃したり、抱えなくてもよい不安を抱え込んだりすることになりかねません。

ですから、いっそのこと「人間関係なんて存在しない」と考えてしまった方が、心がラクになるのです。そこに存在するのは「人間関係」という曖昧なものではなく、「私」と「相手」という、それぞれの個人だけ。そう考えれば、そこに固定されたルールや過度な期待は必要ありません。

お互いが、その時々のコンディションや状況で考えて動いている独立した存在なのです。ときには相手の言動が「いつもと違うな」と感じることもあれば、「すごく仲が良いな」「素敵な人だな」と感じることもあるでしょう。ただ、それだけのことに過ぎないのです。

「こうあるべきだ」と決めつけず、構えずに、その時々の状況や感覚を大切にしていくこと。それが、健やかな心のあり方ではないでしょうか。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。