いっぽう、規模が大きく、斜面がゆっくり滑る現象を「地すべり」と呼ぶ。

 地すべりは、地下水の影響によって地中のすべり面(粘土)で土塊が継続的、再発的に滑動する。なかには斜面の移動量が1年間で1メートル未満のような、ゆっくりした地すべりもある。

 このほかに、大規模かつ高速に斜面が崩れる現象として「山体崩壊」という現象もある。

 山体崩壊はどちらかというと火山の噴火で起こることが多いが、豪雨によっても大規模な山体崩壊は起こる。

たかが雨と舐めていたら
とりかえしのつかない事態に

 また、規模が小さく、斜面がゆっくり移動する現象には「表層クリープ」と呼ばれる現象もある。これは樹木の根元曲がり(幹が根元付近で斜面の下方へ曲がること)などを引き起こす。

 このように、規模の大小や速度の速さ遅さという観点で用語が使い分けられているが、これらを区別する明確な基準があるわけではない。

 目安としては幅30メートル以上を「規模が大きい」と言い、斜面の動く速度が1日当たり5メートル以上のときに、「移動が速い」と言う。

 では、土石流とは何かというと、渓流や川に流れ込んだ土砂が水と一体となって流れ下るものだ。これが住宅地の家屋などになだれ込み、大きな災害を起こすことがある。

 渓流の両岸でがけ崩れが起こると、渓流を流れる水が一時的にせき止められ、上流に水が溜まることがある。すなわち「せき止めダム」と呼ばれている現象だ。そして、さらに豪雨が続き、水の勢いが増すと、渓流をせき止めていた土砂が水に押し流され、土石流となる。このようにがけ崩れで生じた崩壊土砂は、土石流として河川沿いを流下して広範囲に被害をもたらすのである。

 また、融雪も降雨と同じように、地下水位や間隙水圧を上昇させるため、がけ崩れの誘因となる。しかも、融雪は一定期間続くため、集中豪雨と同様の効果を発揮することもあるので知っておきたい。