ミッキーマウスとミニーマウスPhoto:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

ディズニーランドとスターバックス――。どちらもそれぞれの分野で世界一になっており、訪れた客のほとんどが高い満足度を感じています。その裏には、充実した教育コンテンツがあったのです。

※本稿は、関野吉記『管理職のチカラ(管理職の力) ~採用も、業績も、人材育成で変わる~』(プレジデント社)の一部を抜粋・編集したものです。

ディズニーランドとスターバックスの理念浸透と理念教育に学ぶ

 企業は、個々の社員が理念に基づき、主体的な判断を下せるような風土を醸成しなければならない。それを達成した企業で代表的なのは、ディズニーランドとスターバックスであろう。私は、この2つの企業を世界的ブランドに押し上げたマーケターの書籍を監修している。

 この中で指摘していることは、海外は日本と比較してホスピタリティーという面では劣ることも多いが、この2つの企業は、客に優れたサービスを均一に提供できる「社員教育」を徹底することで、それぞれのフィールドで世界一となっているということだ。

 日本人は「もの」でサービスする傾向にあるが、彼らは「精神」でサービスを提供する。社員に対する理念教育によって、社員それぞれが自分がすべきことを理解して行動することで自社の付加価値をつくり出している。

 一方、日本の企業の多くは、社員が自分で考えて行動することを止めるようなルールを踏襲している。企業としての付加価値づくりが今後の成長を決める時代になったいま、致命的だとしか言いようがない。

 東京ディズニーリゾートでは、たとえば清掃スタッフが地面に水でミッキーマウスの絵を描いて客に披露するといった行為が、自発的に行われている。さらに有名なのは、東日本大震災のときの対応だろう。

 観客の負傷を防ぐために、店で売っている被り物を無償で提供したり、避難経路の確保のために、日頃は絶対に客に見せてはいけないバックヤードを開放したりといった「掟破り」が、社員の独自の判断によって次々と実施されたのである。こうした柔軟な対応は、いまだに「神対応」として語り継がれ、東京ディズニーリゾートの評価を高めている。

「あらゆる人に幸福を感じてもらえる場所」というパークの基本理念が末端まで徹底的に浸透しているからこそ、社員はその理念に照らして自分の行動が許されるかどうかを、独自に判断することができたのである。