
2024年1月1日、石川県の能登半島を襲った大地震。住民にとって最大の痛手は断水だった。いかに人の暮らしが「水」によって支えられているか。水こそが人と社会の生命線であることを、水ジャーナリストの著者が伝える。※本稿は、橋本淳司『あなたの街の上下水道が危ない!』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
被災地に立ちはだかる
「水をどう運ぶか」という問題
水道は、あまりにも身近な存在です。蛇口をひねれば水が出る。飲み水に、手洗いに、風呂に、トイレにと、生活のあらゆる場面で当たり前のように使われています。しかし、その「当たり前」が突然失われたとき、私たちは何に直面するのでしょうか。
2024年1月1日、石川県の能登半島を襲った大地震は、この問いを突きつけました。被災地では広範囲で断水が起き、給水活動が続けられたものの、1カ月以上が経っても多くの家庭で水道が使えない状態が続きました。
「水が出ない」と一言で言っても、その影響は実に広範囲に及びます。飲み水が手に入らないだけではありません。入浴ができず、洗濯もできない。トイレが使えず、衛生状態が保てない。自衛隊の給水車やボランティアに頼りながら、水を求めて人々が並び続ける日々が続きました。
水がなければ、暮らしは立ちゆかない。能登の断水は、水道というインフラの重みをあらためて私たちに思い出させました。
被災地における断水時、1つの深刻な課題が「水をどう運ぶか」という問題でした。
各地から駆けつけた水道事業者や自衛隊の支援により、給水所の設置や巡回給水は行われました。