イーロン・マスクの宇宙ベンチャー
スペースXのスターリンクは何がすごい?

 この残る欠点を補うべく20年代より登場したのが、高度約2000kmに多数の人工衛星を置く低軌道衛星(LEO)を利用するシステム。前述のスターリンクがその代表格である。イーロン・マスク率いる米宇宙ベンチャー・スペースXが提供するサービスとしても有名だ。

 約8000基のLEOで高速かつ信頼性の高い通信が強み。速度は下りで最大200Mbps超と、一般家庭用ネット環境の約2倍もある。これなら出張の移動中にクラウド上でオンライン会議に参加するのも、旅行中に動画を編集してオンラインストレージにアップするのも可能だ。

 スターリンクはスカンジナビア航空米ユナイテッド航空エールフランスなども採用している。特にユナイテッド航空は25年末までに300機以上に導入予定で、日本発着路線も多いので注目したい。

 スターリンクの対抗馬としては米アマゾン・ドットコムの「プロジェクトカイパー」が挙げられる。こちらもLEOを活用するもので、速度は下り最大1Gbpsとスターリンクよりもさらに高速になる計画だ。27年に米ジェットブルー航空で初導入予定、ブリティッシュ・エアウェイズイベリア航空なども検討しているという。

機内エンタメで高シェアのパナソニック
新興勢力の台頭にどう巻き返す?

 さて、機内Wi-Fi市場は既存勢・新興勢による戦国時代の様相を見せている。新興勢に対して、従来の大手はどう巻き返すのか。

 航空機の機内エンターテインメントシステムで高シェアを持つパナソニックアビオニクスは、独自の静止衛星からの通信を用いて機内Wi-Fi事業に参入。シンガポール航空やJALの大型機のWi-Fiで採用されている。今後、低軌道衛星ネットワークを構築する米宇宙ベンチャー・ワンウェブ社のシステムも併用する形で新サービスを構築し、スターリンクなどに対抗するという。

 基地局を利用した機内ネットサービスの先駆者である米インテルサット社は、自社の静止衛星と低軌道衛星を用いたシステムを開発した。この接続サービスに対応したアンテナは、JALやスカイマークに採用されている。