
機内食のトレンドは今、どうなっているのでしょうか?世界最大級の機内食クチコミサイト「機内食ドットコム」の奥井力也編集長に話を聞きました。(ダイヤモンド・ライフ編集部)
>>『機内食ジャーナリストが選ぶ、もう一度食べたい「ANAとJALの機内食」とは?』から読む
ANAとJALの機内食、未来予測は「有料化」!?
――機内食のトレンドを語るキーワードとしてまず、「事前予約」について話を聞きました。他にも、ありますか?
「二極化」や「簡素化」ですね。中東のエミレーツ航空をはじめ豪華なサービスで知られるエアラインは、ビジネスクラスやファーストクラスで、ミシュランの星付きシェフのコラボレーションメニューを取り入れるなど、至高のメニューを突き詰めています。
一方で、欧米系エアラインのエコノミークラスは、機内食の簡素化に向かっています。というのも特に欧州ではSDGs(持続可能な開発目標)に敏感で、「食品ロス削減」に躍起になっているんですね。大手エアラインだと1日に何十万食も機内食を提供するわけですが、廃棄する量も膨大です。
今は空港内の飲食店やラウンジが充実している影響もあり、機内食は不要な人も多い。実際に、深夜便だと機内食を受け取らない、受け取ってもほとんど食べない人も多いと思います。それってすごく、もったいないこと。
そこで登場したのが、「機内食不要」のウェブ事前申請です。JALは「Meal Skip Option」、ANAは「No Thank you Option」という名称で、これがヒットしている。私が以前、JALから聞いた話(2023年時)では、月間数千件もの申請があったそうです。
航空会社からすると、機内食不要申請が定着すれば食品廃棄率は下がるし、不要な機内食を搭載しないから重量が下がり燃料削減にもつながる。SDGsを実行していて企業イメージアップに貢献し、かつコスト削減にもなる「いいことづくめ」なんですよ。
――豪華系エアラインの対極にあるのが、そもそも機内食を提供しないLCC(格安航空)ですが、そうした二極化以外にも、もっと細分化された二極化や簡素化が起きているのですね。
そのとおり。近い将来、欧米系のフルサービスキャリアでは、事前申請した人のみ機内食を提供する流れに向かうと思います。この5年くらいで一変するのではないでしょうか。この方向性にANAとJALも追随するのかが今後の注目点です。
国際線に乗ったらタダで「ビーフ・オア・チキン?」と聞かれることは、もうなくなっていくでしょう。それほど、食品廃棄が問題視され、効率運営が重視されています。上位クラスは差別化のために豪華メニューを突き詰める一方で、エコノミークラスはANAやJALのような大手でも有料化の時代が来るかもしれません。
――庶民はちょっと寂しい気もしますが......。ANAとJAL、どちらがより先進的に取り組んでいますか?