個人投資家の間で大きな支持を集めるのが『株トレ』シリーズです。シリーズ第2弾の『株トレ ファンダメンタルズ編』では、60題のクイズを通じて「業績や財務の読み方」を学べます。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之さん。本稿では、窪田さんに「株式投資のセンスを磨くクイズ」を出題してもらいました。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

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在庫の数字から、ビジネスの変化を想像する

 売上が不振の時に在庫(棚卸資産)が減っていれば、在庫をうまく管理していると考えられます。

 しかし、売上が減っているのに在庫が積み上がっている場合は、将来の利益をさらに圧迫しかねません。

 特に製造業や小売業では、この「在庫の変化」は決算説明会で必ず話題になる重要ポイントです。

 決算書を読む際には「この会社でいま何が起きているのか?」を想像する視点が欠かせません。

 バランスシートを読みこなせれば、企業の現状や将来のリスクをいち早く察知できるようになります。

 では、その練習として、次のクイズに挑戦してみましょう。

買ってはいけない株はどっち?

 製造業のA社、B社の業績が悪化し、株価が急落している状況です。

 将来の業績回復を見込んで、買い出動を検討したいと思います。

 そこで、本決算発表後にバランスシートを確認してみたところ、内訳に大きな違いが見えてきました。

買ってはいけない株」はどっち?

株のプロが「株を買う前に必ずチェックする1つの情報」A社のバランスシート
株のプロが「株を買う前に必ずチェックする1つの情報」B社のバランスシート

正解は…

 買ってはいけないのは、B社です。

 では、その理由を解説していきましょう。

「在庫は月商の何倍か?」を基準にする

 在庫の適正水準は業種によって異なりますが、一般的には「月商(月の売上)の何ヵ月分の在庫があるか」を基準に考えます。

 まずは、A社について考えてみましょう。

【A社】

 平均月商
 =[売上高120]÷[12ヵ月]
 =10

 在庫÷平均月商
 =15÷10
 =1.5

 A社の在庫は、売上の1.5ヵ月分であり、おおむね適正な水準だと推定されます。

 続いて、B社について考えてみましょう。

【B社】

 平均月商
 =[売上高60]÷[12ヵ月]
 =5

 在庫÷平均月商
 =50÷5
 =10

 B社は、月の売上「5」に対し、在庫を「10ヵ月分」抱えていることがわかります。

 来期の大幅な売上増が見込めるなら問題ありませんが、そうでなければ「意図せざる在庫」を抱えている状態です。

 売上減少と在庫増加が重なると、在庫評価損などで、将来的に利益がさらに悪化するリスクが高まります。まさに「投資判断の分かれ目」となる重要なポイントです。