早期選考が本格化する9月。よかれと思って伝えたアドバイスが、子どもの選択を狂わせる引き金になることが少なくありません。
新刊『ありのままの自分で、内定につながる 脇役さんの就活攻略書』は、特別なガクチカも将来の夢もなかった普通の就活生=「脇役さん」の著者が、1000冊以上の本を読み込み、自分だけの就活戦略をつくりあげ、食品超大手を含む22社から内定を得た実体験から生まれた一冊です。
「長期インターンにも行っていないし」「自己PRで語れることがない」――。
そんな普通の就活生が、どうすれば自分に合う企業に内定を取れるのでしょうか? 就活に不安を抱えるすべての学生、そしてその姿をそっと見守る保護者の方に届けたい、内定につながるリアルな戦略が詰まった、まったく新しい就活本です。今回は、就活中のお子さんへのアドバイスについて著者である藤井氏が特別に書き下ろした記事をお届けします。

新卒 就活Photo: Adobe Stock

子どもの人生を壊しかねない無意識のアドバイス

早期選考が本格化する9月。夏のインターンが終わり、本選考に向けて準備を進める時期だからこそ、親の一言が子どもの進路を大きく左右してしまいます。

「そんな会社で大丈夫なの?」「せっかく早慶まで出たんだから、もっといいところを目指しなさい」
こうした“無意識の一言”が、本人の選択を狂わせる引き金になることが少なくありません。

「親に言われました」

これまで8年間、就活ブログを運営する中で、数百人の就活生と話してきました。その中でよく耳にするのが「親からこう言われました」というエピソードです。

「大企業に行きたい」「福利厚生が充実したところが良い」「安定してるから公務員になろうかな」などなど。

「それはなぜ?」と僕が理由を尋ねると、返ってくる答えは「親にこうアドバイスされたから」というのです。

もちろん、これらのアドバイス自体は正しいことが多いです。何十年もの社会人経験を持ち、これまでお子さんを間近で育てられた親御さんに勝る適切なアドバイスはありません。

ここで一つ覚えていただきたいのが、お子さんに対して理由を添えずに“結論だけ”を伝えてしまっている場合には要注意だということです。「理由のないアドバイス」は、どんなに有用なアドバイスだとしても、結果的に就活生を苦しめてしまうケースがあるからです。

例えばお子さんが、地方にある利益率の高い中堅企業に対し「ここで働きたい」と思ったとします。しかし、親から「大企業に行きなさい」とだけ言われてしまうと、選択肢の候補から外れてしまいます。

もしここで「なぜ大企業が良いのか」という理由をセットで伝えられたらどうでしょうか。

「安定して高利益を出している企業はお給料が高く、労働条件も良い傾向にある。そうした企業は大企業に多いから“大企業に行きなさい”」

こうした背景を伝えることができれば、就活生も「従業員は100人規模だけど、利益率が高く安定性もある。この会社もアリだな」と考えることができます。

「なぜ」を伝える力を鍛える

僕は中堅大学に通う、本当に普通の大学生でした。成績は最底辺で、アルバイトも長続きしない。持っている資格といえば自動車免許だけ。留学経験を持つ同級生を横目に、僕の海外経験は3歳の頃に行ったグアムだけでした。(しかも記憶はほぼゼロです)

そんな僕が、最終的に就活で22社から内定を得たのは、徹底的に「なぜ」を突き詰めたからです。

トヨタ自動車が生み出した「なぜなぜ分析」をフル活用し、エントリーシートに書くことすべてに、なぜ、なぜ、なぜ…と問いかける。面接で答えに詰まったことがあれば、終わったあとに「なぜ、なぜ、なぜ…」と振り返る。

どんな些細なことでも「なぜ」と問いかけ続けると、その本質が見えてくるんです。

僕のような“普通の就活生”、つまり脇役さんでも、「なぜ」を極めることで身につく『自分の頭で考える力』を育てれば、東大生にだって負けない力を得られると考えています。

受験では、正解がある問題を解いたり暗記したりする力が試されます。一方で就活、そして社会人になってから求められるのは、正解がない課題に対して仮説を立て、実行していく力です。

話が長くなりましたが、親御さんもお子さんにアドバイスするときは、ぜひ「なぜ」という理由を添えてあげてください。一緒に考えてみるのも良いですよね。

お子さんが「自分は就活に自信がないな…」と漏らしたら、ただ「大丈夫」と励ますのではなく、「なんで自信がないんだろう?」と一緒に理由を探ってみる。

そうすれば「学生時代に力を入れたことがないからかも」と本人が考えるかもしれません。そのときに「なぜ“力を入れた経験”が大事だと思う?」と問いかけてあげる。すると「企業は、どんな状況でも頑張れる人かどうかを見てるからだと思う」と、本人から次の答えが出るかもしれません。

こうして自信のなさの本質的な原因が見えてくれば、親御さんは「なるほど、それなら“頑張れる力”を伝える方法は、部活や留学以外にもあるよ」とアドバイスに発展させられる。

こういう“本質に刺さるアドバイス”は、心に深く響きます。

そして拙書『脇役さんの就活攻略書』では、僕のような普通の就活生が自信を持つための考え方を丁寧に書きました。もしお子さんが就活で悩んでいるなら、ぜひ親御さん自身が寄り添うための知識を、この本から受け取ってもらえたら嬉しいです。

就活は本当に孤独です。SNSで成功している人が見える今の時代、本人の不安は想像以上に大きい。だからこそ、結論だけを伝えるのではなく、本質的な悩みに寄り添って“聞いて”あげてください。

この記事が、1人でも多くの就活生と親御さんの幸せにつながることを心から祈っています。

(本記事は『ありのままの自分で、内定につながる 脇役さんの就活攻略書』に関連する書き下ろしです