一生懸命に考えたのに、思ったように伝わらない」「焦りと不安から自分でも何を話しているかわからなくなってしまう」…。言っていることは同じなのに、伝え方ひとつで「なんでこんなに差がつくんだろうと自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
コンサルタントとして活躍し、ベストセラー著者でもある田中耕比古氏の著書『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』から、優秀なコンサルが実践する「誰にでもできるコミュニケーション術」を本記事で紹介します。

「言語化したのに、伝わらない人」が、無意識にやってしまっていることPhoto: Adobe Stock

情報をそのまま伝えてしまう

 フレームワークを使った言語化はどのようにできるか、考えてみましょう。

 とある健康食品を、あなたがとても気に入って、愛用しているとします。

 それを、友人にすすめるときに、どのように伝えれば、相手は「良さそうだ」と思ってくれるでしょうか。

 その健康食品のすばらしさを伝えようとする際に、例えば、4Pの観点で整理してみます。

商品(Product):満腹感を得やすくなり、ダイエットに効果的

価格(Price):一般的なサプリメントよりは、少し高い

流通経路(Place):通販のみ。定期的に届く

販促(Promotion):初回お試しは90%OFF

 という具合ですね。

 これはこれで、情報の整理としては意味があります。これを見せるだけで、どういう商品なのかはわかるでしょう。

 しかし、だからといって友人は「よし、買おう」となるでしょうか? そんなことはなさそうですね。

 では、これを、友人に「おすすめする」という意図を持って伝えようと思ったら、どういう内容にするべきでしょうか。

相手が理解しやすいように「再構築」してから伝える

 まず、友人は、この商品のことを知りません。だから、突然この話をされても、何のことだかよくわかりません。

 そもそも、ダイエットに効く商品をすすめるなら、相手が「痩せたい!」と思っている必要があります。しかも、ダイエットに効く商品をすすめるということは「あなたは太っている(と私は思っている)」と伝えることを意味します。非常に危険ですね。

 そんな場合には、どのように話し始めるのが良いと思いますか?

 私であれば、まずは「この食品のおかげで、○kg痩せた」という体験談から入ると思います。相手が痩せたいと思っているかどうかに関係なく、自分自身が、この商品によって良い効果を得た、という話から始めるわけです。

 この話題に対してポジティブな反応をしてくれたら、次は、相手がダイエットに興味があるかどうかを上手に確認しましょう。

 間違っても「あなたも、これを飲んで痩せたほうがいい」なんて失礼なことは言わないように。友情にひびが入りかねません。

 ダイエットに興味があるようならば、商品の内容についての説明に移ります。

 順番は、相手の関心が高いテーマからにするべきですが、一般的には、「なぜ効くのか」というところが一番大事でしょう。

 また、価格が高いという情報は、可能ならば「欲しい」と思ってもらってから伝えるほうがいいと思います。

 以上を踏まえると、例えば、次のような伝え方が可能です。

あなた「最近、この商品を使っているんだけど、3ヵ月で5kg痩せたんだよね」

友人「え。そうなんだ。何か、ちょっとすっきりしたなと思ったんだよね。それ、いいの?」

あなた「(お、興味を持ってくれたぞ)そうなんだよね。友達から聞いて試してみたんだけど、これを食べるとすごい満足感(Product)があるから、間食の代わりにしたり、飲み会に行く前に食べておいたりすると、カロリーの摂取量を抑えられるんだ。もう、明らかに、食べる量が減ったよ」

友人「すごい。めっちゃ効きそう」

あなた「(乗ってきたな)結構、周りにおすすめしてるんだよね。こないだAさんとか、Bさんにも紹介したんだけど、もう使い始めてるみたい。いわゆる定期便で届く(Place)タイプなんだけど、初回お試しは90%OFF(Promotion)だから、ちょっとやってみるかーってなってたよ」

友人「おお。最初は安いんだね。それは試してみてもいいかも」

あなた「いいと思うよ。興味あったら、ぜひ。サプリとしては少し高め(Price)なんだけど、初回だけやってみて、合わなかったらやめちゃえばいいと思う」

友人「なるほどね。ちょっとやってみるよ」

 フレームワークを用いて整理した情報を、相手に伝わるようにまとめ直し、適切な順番で伝える。そうすることで、こちらのメッセージをスムーズに届けることができます。

 例えば、子どもの教育方針についてパートナーと相談する必要があるとします。あなたの考えを、どのように伝えれば、相手と建設的な議論ができるでしょうか。

 もしくは、同窓会の幹事をすることになったとします。予算や参加人数を考えると、条件に合うお店がありません。会費の引き上げや、開催日時の変更などの打ち手が必要そうですが、何をどのように伝えれば、参加者は納得してくれるでしょうか。

 誰かに考えを届けるためには、相手が理解できるように、その人に合わせて、情報の構造を再構築することが大切です。

 考えたことを言語化し、それを伝え方の「型」にはめ込んでいけば、あなたのコミュニケーションは劇的によくなるはずです。

(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の一部を抜粋・編集したものです)