「一生懸命に考えたのに、思ったように伝わらない」「焦りと不安から自分でも何を話しているかわからなくなってしまう」…。言っていることは同じなのに、伝え方ひとつで「なんでこんなに差がつくんだろう」と自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
コンサルタントとして活躍し、ベストセラー著者でもある田中耕比古氏の著書『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』から、優秀なコンサルが実践する「誰にでもできるコミュニケーション術」を本記事で紹介します。

スムーズに「お願い」する方法
ここでは「言いづらいこと」をスムーズに届けるシーンをご紹介します。
誰かにお願いごとをするとき、どのように対処するのが良いのでしょうか。
お願いするのと、断るのは、表裏一体です。
共通点も多くありますので、この節でまとめてご紹介していきます。
依頼する際も、断る際も、基本的な流れは共通しています。最も大切なのは、相手に寄り添う姿勢です。
▼「ダメな例」と「反省すべき点」
ダメな例①
→ 反省点:前提も何もなく、いきなり言われて戸惑ってしまう。また、相手への配慮もなく「なるはやで」という圧の強い表現も用いられている。
ダメな例②
→ 反省点:依頼に来た背景はわかるが、緊急性や重大性がわからず、断っても良いのかどうか判断できない。
また、依頼者が誰なのかもわかりにくく、Y課長の依頼なのか、お願いに来た人自身の依頼なのかも曖昧になってしまっている。
ダメな例③
→ 反省点:状況はわかったが、自分が何を依頼されているのかがわからない。話が見えないまま、いつまで黙って聞いていればいいのだろうと困ってしまう。
▼ テンプレを活用した「お願い・依頼」
急遽、A社さんの□□プロジェクトが動き出していて、来週中に初期提案をまとめないといけなくなってしまったんです。急な話なので、部署をまたいで対応することになりました。
そこで、もし可能なら、Xさんに競合調査の部分を手伝ってもらえないかと思って相談に来たんです。
Xさんは、B社さん向けのプロジェクトで過去に同様の調査もしていて、土地勘もあるので、相談してみたらいいんじゃないかとY課長に言っていただいたのですが……難しそうですか? 厳しいということであれば他をあたってみますが、Xさんにお願いできると本当に助かります。どうでしょうか?
▼ この構造にテンプレがどう使われているか
【言語化テンプレの活用】
お願い・依頼をする際に、最も大切な「言語化テンプレ」は「ロールプレイ」テンプレです。
相手は何も知らない状態で、突然“お願い”をされるわけなので、何の話なのかがわからないと、YesもNoもありません。
相手が知りたい情報をしっかり見極めて、何を伝えるべきかを考えます。
◎ロールプレイ:突然の依頼なので、相手は「何の話なのか」「なぜ、自分に依頼したのか」などの疑問が浮かぶ。
急に話しかけられた側の立場になって、伝えるべき情報を検討し「プロジェクトがたいへん」「経験がある人に頼みたい」などを整理。
【伝え方テンプレの活用】
依頼する場合には「寄り添い」で依頼する理由を明確化していくのが基本です。
その上で、「引き算」を用いて手短に話すようにしましょう。
また、断りにくくなるような「お膳立て」ができると最高です。
◎寄り添い:論理的に「それは、たいへんな状況だ」「それは、自分に話してくるのも当然だ」と考えられるように情報を整理。プロジェクトが急に立ち上がり部署横断で対応している中で、類似の経験のある自分に手助けを求めてきている、というのは聞き手にとって納得感がある。
◎お膳立て:Y課長による推薦、というのは、断りにくい理由になる。また、上司からの評価が高いというのは、自尊心をくすぐる効果もあるかもしれない。
◎引き算:プロジェクトの全体像や、他にどんなタスクがあるのかなどは、プロジェクトメンバーではない聞き手(Xさん)には関係がない。不要な情報は減らした上で、引き受けてもらってから、追加の情報を必要に応じて提示する方針。
▼ 依頼の際に「迷惑がられない」ために、見直すべきポイント
突然のお願いごとは、基本的に迷惑なものです。
それを、できるだけ「受け入れやすい」形に調整するのが、今回のテンプレのポイントです。次のリストでチェックしていきましょう。
□ 背景情報は、過不足ないか
→ どんな状況なのか、なぜその人に頼むのか、を短くまとめられているか。
□ 依頼内容は明確か。作業ボリュームは読めるか
→ 作業の重さがわからないと、受けられるかどうかを判断できない。
□ 自分の都合だけでなく、相手への配慮が示されているか
→ 断る余地が残されているか。忙しさや状況に対する気遣いの言葉があるか。
(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の一部を抜粋・編集したものです)