トルコ経済は2次関税リスクで揺らぐ安定Photo:PIXTA

トランプ米政権の関税政策は新興国経済に波及し、トルコも例外ではない。ロシア産原油を巡る2次関税リスクに加え、通貨リラの不安定や内需の鈍化、輸出不振、政治不信が重なり、表面的な景気底入れ感とは裏腹に不透明感が強まっている。(第一生命経済研究所主席エコノミスト 西濵 徹)

ロシア巡るトランプ関税の
トルコへの波及リスク

 このところの世界経済や金融市場は、トランプ米政権の関税政策に翻弄(ほんろう)されている。米国は、安全保障上の脅威への対応や貿易赤字の是正に向けて関税政策を用いるとともに、相手国との協議による『ディール(取引)』を通じて米国に有利な環境の構築を図っている。

 さらに、トランプ氏は7月、ウクライナ戦争の早期終結を目的に、ロシア産原油を輸入する国に対して追加関税(2次関税)を課す方針を明らかにした。そして、先月末にはウクライナ戦争以降にロシア産原油の輸入を急拡大させるインドに対し、相互関税(25%)に加えて25%の2次関税を上乗せして、合わせて50%の高関税を課す措置を発動した。

 これは、ウクライナ戦争をきっかけに欧米などがロシアに対する経済制裁を強化する一方、中国やインドなど一部の新興国はロシアからの輸入を拡大させており、結果的にロシアの継戦能力を下支えしたためとみられる。

 上述のようにトランプ氏はインドに2次関税を課す一方、インドと同様にロシアから原油や天然ガスなどの輸入を拡大させる中国に対する発動を見送っているものの、現時点においては予断を許さない状況にある。

 米国はトルコに対する相互関税を10%と、一律分と同水準としている。対米輸出額も名目GDP(国内総生産)比で1%、輸出全体に占める対米比率も6%程度にとどまるため、マクロ面でみた直接的な影響は限定的と見込まれる。

 しかし、トルコも中国やインドほどではないものの、ウクライナ戦争以降にロシアからの輸入を急拡大させるとともに、足元でも依然高水準で推移している。よって、金融市場などではこの件についてトルコにスポットライトが当たることはないものの、トランプ氏がトルコに対して2次関税を課すリスクは残っている。

 次ページでは、トルコ経済の現状を検証するとともに、先行きを分析、予測する。