同じ失敗をして「伸びる人」と「伸びない人」がいます。この差は一体なんなのでしょうか。
新刊『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』(ロジャー・ニーボン著/御立英史訳、ダイヤモンド社)は、あらゆる分野で「一流」へと至るプロセスを体系的に描き出した一冊です。どんな分野であれ、とある9つのプロセスをたどることで、誰だって一流になれる――医者やパイロット、外科医など30名を超える一流への取材・調査を重ねて、その普遍的な過程を明らかにしています。今回、『EXPERT』の著者、ロジャー・ニーボン氏へのインタビューが叶いました。南アフリカで外科医として病院勤務を経験後、イギリスで総合診療医として活躍、現在はロンドンに本部を置く世界有数の理工系名門大学の一つであるインペリアル・カレッジ・ロンドンで外科教育の専門家としてエキスパートについて研究している彼に、失敗から学ぶ人の特徴について聞いてみました。(構成/ダイヤモンド社・森遥香)

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一流が必ず持っている「学びの姿勢」

――失敗から学ぶ人と、失敗から学ぶ前に諦めてしまう人がいると思います。その違いはどこにあるとお考えですか?

ロジャー・ニーボン氏(以下、ロジャー氏):そうですね、それは「失敗をどう捉えるか」という点に尽きると思います。基本的に、失敗が起こるのは前進に向けて何かを試した証拠です。新しいことに挑戦する限り、失敗は避けられません。もちろん誰にとっても気持ちの良いものではなく、悔しい思いもします。しかし、エキスパートになる人々はそれを「改善のための指標」として受け止めるのです。

失敗を恐れて挑戦を避ける人や、自分を無能だと感じてしまう人がいる一方で、一流に至る人は「失敗は挑戦の証拠」であり、さらに先へ進むためのステップだと理解しています。失敗を恐れずに、「もっとうまくなりたい」「次の段階に進みたい」という気持ちで進み続ける姿勢こそが、両者を分ける違いだと思います。

経験を積むにつれて、失敗の内容も変わっていきます。キャリアの初期に犯す失敗と、40年後の熟練した段階での失敗では性質がまったく異なります。ただし、いずれも「未知のこと」「自分の限界に挑戦したこと」から生じるという点では同じです。上達に不可欠な要素として受け入れることが重要なのです。

「空港を間違える」――想定外のミスから学んだこと

――著書の中で、飛行機の操縦で「ヒヤッとした」経験を紹介されていましたね。その時のことを教えていただけますか?

ロジャー氏:ええ、あれは私にとっても忘れられないエピソードです。飛行士として最初の訓練を受けた後、空港から空港へ移動する際のことでした。管制塔とのやり取りや、航路の確保といった難しさには直面するだろうと予測していましたが、まさか「空港を間違える」という想定外の失敗を犯すとは思いもしませんでした。

教官ですら生徒にあらかじめ注意することのないレベルのミスで、私自身も「なぜそんな愚かなことをしてしまったのか」と自問しました。

しかし、この出来事から大きな学びを得ました。私は当時、成功に必要な要素――離陸や着陸の正確さ、計器の操作などに集中しすぎていました。けれど実際には、全く予期しないエラーが起こることもある。そこから学ぶことがいかに大切かを痛感したのです。失敗というのは、想定内のものだけではありません。思いも寄らぬ失敗が起きることもあります。そのときにこそ、自分の限界を知り、次の成長の糧にできる。私の経験が、挑戦を続ける誰かに勇気を与えられればと思います。

(本記事は、ロジャー・ニーボン著『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』の抜粋記事です。)