「頑張っているのに報われない」「才能がないんじゃないか」こうして落ち込むことはありませんか?
新刊『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』(ロジャー・ニーボン著/御立英史訳、ダイヤモンド社)は、あらゆる分野で「一流」へと至るプロセスを体系的に描き出した一冊です。どんな分野であれ、とある9つのプロセスをたどることで、誰だって一流になれる――医者やパイロット、外科医など30名を超える一流への取材・調査を重ねて、その普遍的な過程を明らかにしています。そして、本書のメッセージは「頑張りすぎて疲れてしまった」私たちが生きる今の社会にこそ響くものです。本記事では、『EXPERT』の一節を手がかりに、“才能はあとから育つ”という話をお届けします。(構成/ダイヤモンド社・森遥香)

頑張っているのに報われない
頑張っているのに報われない、結果がすぐに出ない自分に落ち込む――そんな経験はありませんか。今の社会は、誰もが「即効性」を求められる舞台の上で生きています。そのせいで、「生まれつき光るものがなければ、努力しても意味がない」と思い込んでしまいがちです。
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.6より
まさにこうした思い込みが、私たちの心を疲れさせているのではないでしょうか。
即効性を求める社会が抱える落とし穴
SNSでは一夜にして注目を集める人が称賛され、ビジネスの現場では短期間での成果が当たり前のように求められます。成果を出すのが遅ければ、努力そのものに価値がないかのように扱われることすらあります。
しかし、本当にそうでしょうか。
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.6より
ここで語られているのは、結果ではなく「過程そのものの価値」です。時間をかけて何かを学び、少しずつできることが増えていく過程は、それだけで人を支えてくれる大切な営みなのです。
熟達することの喜び
私たちは往々にして「すぐに結果が出なければ意味がない」と焦ってしまいます。しかし、努力を積み重ねる中でしか味わえない喜びがあります。昨日より今日、今日より明日と少しずつ成長していく感覚は、短期的な成果では得られない深い充実をもたらします。
この「熟達すること」こそ人間の根源的なニーズを満たすものなのです。誰かに評価されるから続けるのではなく、自分自身が確かに成長していると感じられるからこそ続けられる。そうした営みが、私たちの生きる意味を形づくっていくのです。