働き方が多様化するなか、「定年=引退」というモデルは過去のものとなりつつある。「現役時代のようなフルタイム勤務ではなく、ストレスなく、少ない時間で続けられる仕事があれば……」と考える人も少なくないだろう。では、65歳以降、豊かに暮らすにはどうすればいいのか。そして、定年後の仕事にはどんな選択肢があるのか。本記事では『月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑』の著者・坂本貴志氏にインタビューを実施。仕事の実態を、就業データと当事者の声をもとに紐解いてもらった。(構成・聞き手/ダイヤモンド社書籍編集局、小川晶子)

【定年後の仕事】65歳以上の就業者数ランキング、高齢になっても続けやすい「1位」の職種とは? 理由も深掘りPhoto: Adobe Stock

65歳以上の人が多く働いている職種とは

――『定年後の仕事図鑑』には高齢期から始めやすい仕事19職種、100の仕事が紹介されています。その中でも65歳以上の方がとくに多く働いている職種にはどのようなものがありますか?

坂本貴志氏(以下、坂本):年齢別就業者数のデータから見ると、シニアの方の割合が多いのは次のようになります。

3位 清掃員 36.1%
2位 施設管理人 52.1%
1位 農業 53.0%

まず「清掃員」ですが、労働時間が短いのが特徴として挙げられます。65歳以上の就業者の労働時間を見ると週に15~21時間働く人が33.3%ともっとも多く、2番目に多いのは週に15時間未満の人で29.1%です。週に2~3日、1日2~3時間といった勤務形態が非常に多いと考えられます。

体を動かす仕事で、ストレスも低めですから、シニアの方にとって魅力が高いのではないかと思います。

――オフィスビルの清掃をされている方がすぐに思い浮かびましたが、公園・道路の清掃やハウスクリーニングなど、いろいろな仕事があるんですね。

坂本:ハウスクリーニングの仕事は増えていますよ。一般家庭に行ってキッチンやバスルームなどの清掃をします。いまの高齢期の女性はあまり外で働いてこなかった方も多いですが、家事のスキルを活かすことができるのでおすすめです。

マイペースに仕事ができる「施設管理人」

――2位の「施設管理人」はどうでしょうか。

坂本:こちらも労働時間が短めで、週に15~21時間働く人が30.7%ともっとも多いです。週に2~3回のシフトや、午前中のみといった形態で勤務する人が多いと考えられます。

ビル・駐車場・マンション管理人として働く人に行ったアンケート調査では、「ひとり勤務なのでマイペースで気兼ねなくできる」「座りっぱなしでも立ちっぱなしでもないので体力的にちょうどいい」といった点を仕事の良い面として挙げている方が多くいらっしゃいます。

――本書に載っているインタビューの中で、駐車場管理人をされている72歳男性の方は「巡回では1500歩ほど歩くので適度な運動になりますし、精神的なストレスがほとんどなく、マイペースで仕事ができる。老後の職場としてはベスト」とおっしゃっていましたね。

高齢になっても続けやすい農業。理由は?

――1位は「農業」ですが、なぜシニアの方が多いのでしょうか?

坂本:それまで農業をされていた方が、65歳以降も続けているケースが多いのだと思います。自然の中で体を動かす仕事ですから、働くことによって健康が維持される面がありますよね。実際、若々しく元気な方が多くいらっしゃいます。働けなくなるまで続けているのです。

年を取ってから農業にチャレンジする人も

坂本:もう一つのケースは、新たに農業を始められる方です。それまでは会社員をしていたけれど、定年後は農業をやってみたいということで農地を取得したり、親から経営継承したりして農業をされる方も一定数います。

75歳以上の就業者は39.8万人と全階層の中でもっとも高く、長く続けやすい仕事だと言えます。