【知らないと大損】相続財産は“売るタイミング”が9割…税金が1000万円以上変わる事例を解説!
大切な人を亡くした後、残された家族には膨大な量の手続が待っています。しかし手続を放置すると、過料(金銭を徴収する制裁)が生じるケースもあり、要注意です。国税庁によれば、2019年7月~2020年6月において、税務調査を受けた家庭の85.3%が修正となり、1件当たりの平均追徴課税(申告ミス等により追加で課税される税金)は、なんと641万円。税務署は「不慣れだったため、計算を間違えてしまった」という人でも容赦しません。
本連載では「身近な人が亡くなった後の全手続」を、実務の流れ・必要書類・税務面での注意点など含め、あますところなく解説します。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。税理士法人の代表でもあり、相続の相談実績は5000人を超えます。この度『ぶっちゃけ相続「手続大全」 相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を出版し、葬儀、年金、保険、名義変更、不動産、遺言書、認知症対策と、あらゆる観点から、相続手続のカンドコロを伝えています。刊行を記念して、本書の一部を特別に公開します。

頭のいい人がやっている「相続財産の売り方」とは?
本日は「身近な人が亡くなった後の手続」として、相続した財産の売り方についてご紹介します。
相続税を納めた人が、相続財産を亡くなった日から3年10か月以内に売却した場合には、「取得費加算の特例」という所得税の特例を使うことができます。
この特例はその名の通り、取得費(過去に購入したときの金額)にあるものを加算してくれるのです。取得費が増えれば、その分、譲渡所得も減りますので、支払う所得税も減ります。
それでは一体、何が加算されるか。それは相続税です。相続人が納めた相続税のうち、売却したものに対応する部分の相続税を取得費に加算することができるのです。
実例解説:1億円の相続税を納めたら?
例えば、4億円の財産を相続して、1億円の相続税を納めた人がいたとします。そして、相続した財産4億円のうち、2億円の土地を売却しました。この土地は故人が過去に8000万円で購入したものだとします。
本来であれば、売却代金2億円から取得費8000万円を引いた1億2000万円が譲渡所得(儲け)となり、税率20.315%をかけた約2400万円の税金を納めなければいけません。
しかし、取得費加算の特例を使った場合、納めた相続税1億円のうち2分の1にあたる5000万円の相続税を取得費に加算することができます。
結果として、2億円から取得費8000万円と加算分5000万円を引いた7000万円が譲渡所得となり、税率20.315%をかけた約1400万円まで税負担が軽くなるのです。※土地を売却したという前提で解説しましたが、不動産以外でも、相続した株式や投資信託、ゴルフ会員権や絵画などを売却した場合もこの特例を使うことができます。
夫婦間で相続したら、取得費加算の特例は使えない?
取得費加算の特例は、相続税を納めた人が、相続したものを売却した場合に使える特例です。相続税がかからなかった人には、この取得費加算の特例は関係ありません。相続税がかかるのは、一定額以上の財産を残して亡くなった人だけです。現在、日本全国の100人中9人に相続税が課税されています。
ここでよく見落とされる論点として、夫婦間の相続の場合を考えてみましょう。夫婦間の相続には、最低でも1億6000万円まで相続税を課税しない、配偶者の税額軽減という特例があります。この特例により、配偶者には相続税が課税されないことが多く、結果として、配偶者は取得費加算の特例が使えない場合がほとんどです。このことを鑑みると、売却予定の相続財産はあえて子に相続させることで取得費加算の特例の恩恵を最大限享受するのも1つの手です。
(本原稿は、橘慶太著『ぶっちゃけ相続「手続大全」』を一部抜粋・編集したものです)