日本が抱える大矛盾に激論
「今、石破さんと電話つないでくださいよ!」
田原 いや、そうはまったく思いません。「国のために命をささげることはいいことだ、英雄」だ、とされる国になっていたでしょう。

村本 なるほど、今のアメリカのような考えになっていたかもしれないってことですね。勝ち負けだけでいえば、負けてよかったっていうことですね。確かになあ。どんどん反省していきましょう! でも憲法9条を改正して、自衛隊を軍隊にしようとする動きも活発化していますよね。
田原 僕はね、自衛隊の位置付けの明確化のために憲法を改正すべきと、歴代の首相に言ってきました。日本は自衛隊を軍隊として規定していない。こんな国はほかにない。
村本 僕の弟は自衛隊員なんです。弟に戦争なんて行ってほしくない。武器なんて全部捨ててしまえばいいんですよ。
田原 そしたら自衛隊はどうしますか。
村本 災害派遣部隊のような組織にすればいいと思います。日本は災害が多いので、喫緊の課題はそっちでしょう。

田原 どの国も軍隊を持っていますよ。
村本 軍隊なんていらないじゃないですか。僕はそう思いますよ。人間というのは臆病だから、怖がり合っているんだと思います。怖いから兵器を持つ。向こうが持ったら、怖くなってこっちも持つ。臆病が連鎖し、世界を恐怖で覆っている。僕はとっとと自分たちからそうした連鎖から抜けるべきだと思います。日本がそれを率先して行っていけばいいんです。
田原 ほかの国が攻めてきたらどうしますか。
村本 すぐには攻めてこないと思いますよ。
田原 そんなのわからないじゃない。
村本 外交で何とかしなければいけないんです。そもそも、平和の選択肢が核とか軍隊とかだけというのがおかしな話です。もう武力の時代ではないんです。絶対大丈夫です。軍隊なくしても絶対大丈夫。
アメリカの大統領ばかりと会うのではなく、中国の習近平(国家主席)や、北朝鮮の金正恩(朝鮮労働党総書記)などともしっかりと会って話してくる。政治家が行かないから国民も不安になるし、向こうも警戒を強める。自分たちから武器を下ろし、平和への覚悟を世界に示していく、この日本は、そうした国であってほしいと思います。
田原 日米同盟で日本はアメリカに守ってもらっているからね。日本は「絶対に戦争をしない」と言っているけれど、たとえ同盟国でもアメリカに対しては「戦争するな」とは言えない。

村本 戦後80年たっているのに、いまだに精神的にアメリカから独立できない。なんでなんでしょうか。上にたてつけない、意見も言えないなんて、昭和のサラリーマン根性じゃないですか。
靖国神社だって、政治家たちは票が欲しいから手を合わせに行きますよね。でも沖縄には行かない。国のために犠牲になった戦没者たちの骨が埋まっているのに、その土を辺野古基地に使うことは、平気で見て見ぬふりをしている。どうしてなんでしょうか。戦争でこの国を守ってくれた人に手を合わせるのであれば、靖国だけでなく沖縄にも行くべきなんです。
田原 僕は沖縄が抱える問題について何度も取材してきましたが、沖縄問題というのは、日本の大矛盾の典型ですよ。日米地位協定(※)なんてどうしようもないものが、いまだに改定されずにいる。
日米地位協定というのは、アメリカによる占領政策の延長のようなもので、日米地位協定に基づいた日米合同委員会で合意したことに、日本政府や地方自治体は従うしかないんです。
※1960年に締結された、在日米軍の権限や基地使用を規定する協定
村本 僕は「日本はアメリカに守ってもらっている」という戦後のスタートが、日本の誇りや主体性をなくす根本原因になっていると思っていて、そういう日本がすごく嫌なんですよね。
田原 村本さんはどういう主義なんですか?
村本 世界主義ですよ。世界主義チャップリン。国境とか関係ないと思っています。なぜ日本の首相は中国や北朝鮮へ行かないんでしょうか。アメリカより全然近いですよ。なぜ日米地位協定は改定できないのでしょうか。
田原 石破さんに言えばいいじゃない。
村本 今、石破さんと電話つないでくださいよ! 田原さん、番号わかりますよね。僕、言いますから。
田原 じゃあちゃんと言ってよ。今度ね、そういう機会をつくりますよ。
村本 石破さんとは以前、一度、対談をしたことがありますが(※)、その後に首相になられて、言いたいことがいっぱいあるんですよ。
※2017年にテレビ大阪の番組「わざわざ言うテレビ」にて

田原 日米地位協定に関しては、2018年、当時の安倍首相にも直接、伝えましたよ。
「あなたは憲法改正をしようとしているが、自民党の幹部たちに取材をしているとどうも皆、憲法改正は無理だと考えているようだ。憲法改正前に、まずは日米地位協定を改定すべきではないか。トランプ大統領と仲の良いあなたなら不可能ではないはずだ」と。
すると安倍さんは、日米地位協定を改定すると、はっきりと言いました。ところが2020年の5月に、外務省の幹部から連絡があり会ったところ、実は、アメリカの国防総省の反対によって、日米地位協定の改定は無理そうだと、こう告げられました。なぜイタリアやドイツは改定ができたのに、日本はできないのかと聞くと、イタリアやドイツはNATO(北大西洋条約機構)に加盟していると。NATOというのは、安全保障面でアメリカと完全に相互性がある。それに対し日本は、限定的な集団的自衛権のため、難しいんだと。
日本はこれまでになく、主体的に安全保障の構築を行うべき段階に来ていますね。僕は日米地位協定の改定がその最重要ポイントだと思う。
村本 田原さんは、これからの日本はどうなっていくと思いますか。