田原総一朗と菅義偉前首相がロング対談!安倍・菅・岸田、各政権の違いは?徹底的に語り尽くす!なぜ「安倍・菅政権」は戦後最長の長期政権になったのか? Photo by Teppei Hori

「僕は総理大臣には厳しく言うが、辞めた人には厳しいことは言わないよ」。今回、菅(すが)義偉前首相との対談を前にそう話すのは、数々の政界の重鎮を取材し、意見を交わしてきた稀代のジャーナリスト・田原総一朗氏。2人が会うのは、菅氏の首相在任中に意見交換をして以来であり、その後、首相退陣、岸田政権誕生、安倍元首相銃撃事件と、世の中は目まぐるしく動いた。コロナワクチン争奪戦、安倍元首相の銃撃事件後の心境、「安倍・菅政権」が戦後最長の政権になった理由、安倍首相と岸田首相の違い、カーボンニュートラル宣言時の心理、岸田政権の安全保障政策や増税、そして菅義偉前首相が今後成し遂げたいこと、若い世代へのメッセージ――。戦後の日本政治の中枢を歩いてきた2人の対談の模様をお伝えする。(構成・文/ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光、撮影/堀哲平)

Youtube「田原総一朗チャンネル」とコラボレーションし、対談前後のシーンを、こちら(https://www.youtube.com/@taharasoichiro)でご覧いただくことができます(※リンク先はダイヤモンド・オンラインの外部サイトとなります)。

今振り返る、菅政権の
「コロナワクチン争奪戦」

田原総一朗(以下、田原) お忙しいところをすみません。よろしくお願いします。

菅義偉(以下、菅) とんでもないです。よろしくお願いします。さわやかですね、相変わらず。

田原氏写真田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学卒業後、岩波映画製作所や東京12チャンネル(現・テレビ東京)を経て、1977年からフリー。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」等でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ「ギャラクシー35周年記念賞(城戸又一賞)」受賞。早稲田大学特命教授や「大隈塾」塾頭を歴任する。「朝まで生テレビ!」「激論!クロスファイア」の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。近著に『さらば総理』(朝日新聞出版)、『人生は天国か、それとも地獄か』(佐藤優氏との共著、白秋社)など。2023年1月、Youtube「田原総一朗チャンネル」を開設。

田原 では、早速始めましょう。菅さんが総理の時、世界で新型コロナウイルスのワクチンの争奪戦が激化しており、日本はワクチンの確保が出遅れていた。そのことで菅さんは国内から大きな批判を受けた。

 その後、多くの人にワクチンが行き届き、今になって、あのとき、菅さんは実はよくやったのではないかと、称賛の声も聞こえてくるようになりました。そのことはどう感じていますか?

 (コロナ対策は)できるだけわかりやすくやろうと思ったんですよね。

 私は安倍内閣で官房長官を7年8カ月やってきました。安倍さんと一緒に長くやってきて、安倍さんがご病気で退陣され、それを引き継ぐ形で総理になりましたので、それまでの政策を継承し、さらに発展させていく、そういう思いでした。

 その中で、コロナ対策は最優先事項であり、使命でもありました。それで私は、海外からのさまざまな資料を調べている中で、やはりワクチンが切り札になると判断し、全力を注ぎました。

田原 そうでしたね。それまでは、ファイザーなどのワクチンを開発する製薬会社との交渉も、すべて代弁者を通して行っていた。厚生労働相も経済再生相も、役人相手にイニシアティブを取ることができなかった。そこで菅さんは、送れを取ったワクチン争奪戦の巻き返しのため、河野太郎さんを新型コロナワクチン接種推進担当相に任命し、外務省などにも協力を求め、ファイザーの米国本社と交渉。早期の供給を直接要請しました()。

※その後、国内におけるワクチンの大規模接種の初回が2021年2月17日から実施された。
 
菅前首相菅 義偉(すが・よしひで)
衆議院議員、第99代内閣総理大臣。1948年秋田県生まれ。高校卒業後に上京し就職。法政大学卒。代議士秘書、横浜市議を経て、1996年衆議院選挙で初当選すると、以後、8期連続小選挙区当選。第1次安倍内閣で総務大臣に就任し、「ふるさと納税」制度などを創設した。その後、自民党選挙対策総局長、党組織運動本部長などを歴任。2012年に第2次安倍政権の発足に合わせて内閣官房長官に就任、歴代最長の7年8カ月にわたって政権を支えた。2020年9月16日、第99代内閣総理大臣に指名される。2021年10月4日に退陣。趣味は渓流釣りとウォーキング。座右の銘は「意志あれば道あり」。

 「1日100万回の接種を実施する」と掲げました。1日国内で100万回打てば、2021年の7〜8月には、65歳以上のほぼ7割の人が2回接種できることになる。期限を設定し、そこから逆算して「100万回」としたんですね。

 すると、各自治体の多大な協力もあって、短期間の間に一挙に進みました。結果としては、65歳以上の9割近くの人が7〜8月で2回接種することができたんですね。

 後に厚生労働省が、ワクチンを接種していなかった場合の推定モデルと実数を比較し、ワクチンによって、2021年の7月と8月で、推定10万人以上の高齢者の感染を抑制した可能性がある、また、推定8000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性があると、こういうデータを発表しました()。

 ですから私は、あそこでコロナの脅威というのが、一段落し始めたのかなというふうに思っています。

※2021年9月8日に開催された、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの第51回「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン等の効果の推定」にて報告。
 

田原 安倍さんが亡くなられて7カ月たちましたが、菅さんの心境はどうですか。