スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』。その刊行を記念して、訳者の栗木さつき氏に話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

オフに「没頭できる時間」を持つ
――忙しい翻訳の締め切りをこなす中で、休息はどのように取られていますか? 土日はどうされていますか?
栗木さつき氏(以下、栗木):じつは、旅行以外では丸一日休むことはあまりないんですよね。仕事が詰まっていて、土日も午前中は仕事を入れることが多いです。私は仕事が速いほうではないので、どうしてもそうせざるを得ないんです。ただ午前に仕事をしたら、午後は頭をリセットできるようにメリハリをつけて休んでいます。
――『一点集中術』にはオフの時間の「一点集中」についても書かれていますね。
栗木:「毎週、短くてかまわないので、自分が興味を持っていることに専念する時間を設けよう」とありますね。そうやってオフの時間に「一点集中」できる活動を入れないと、人生に充実感を持てなくなると。
それで言うと、毎週とまではいきませんが、休みの日にはよく登山に行っています。友人と、北アルプスの3000メートル級の山など、大きな山に泊まりに行ったり。そうした山では携帯の電波も届かないですから、強制的にデジタルデトックスができます。結果的に、思考がすっきり整理されて、脳にとって最高の休息になります。
登山をしているときは、目の前の一歩一歩を進まないと怪我をしてしまうので、集中せざるを得ません。五感を研ぎ澄ませて、自然の音や空を眺めたりするのは、本当に没頭できて幸せな時間です。何より新鮮な空気をたくさん吸えますし、登山のあとは頭がすっきりします。
選択して、ブレずに集中する
栗木:本書にはこんな記述もあります。
一点集中は健康や対人関係のためにも必須だと言ってるんですよね。そして、人と食事をするときなどは「スマホをそばに置かないこと! (中略)これは、自分の行動を『意識』して『選択』するという問題だ」と。
人と一緒にいるのに、目の前の相手よりスマホを選ぶという行動を選択してしまっていいのか、というわけです。行動を意識的に「選択」して、それを「ブレずに実行せよ」というのは、本書で繰り返し強調されているメッセージです。
――ハイキングや登山でも、相手に一点集中できる感覚はありますか?
栗木:はい。私は親しい人と会っておしゃべりをするのが好きなのですが、たとえば飲み会に行くと、どうしても愚痴や人の悪口が出ますよね。でも、登山で愚痴ばかり言っている人なんて想像できます? みんなで同じ方向を向いてただ歩いていると、あまり悪い話をしないんです。自然の中だと気持ちが明るくなるのか、楽しい話をして、よく笑ったりします。もちろん歩きスマホをするわけにもいきませんし。
変な飲み会より、よっぽどハイキングをするほうがいいですよ。東京の人でも、鎌倉アルプスとか湘南平とか、近場にちょうどいい山がありますから、ぜひおすすめです。