スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』。その刊行を記念して、訳者の栗木さつき氏に話をうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【全人類やめるべき】仕事ができない人が絶対している「超余計なこと」ワースト1Photo: Adobe Stock

毎日、どこに時間が消えている?

――本書は、多くのビジネスパーソンが陥りがちな「忙しいわりに成果ゼロ」という状態から脱却する方法を提示しています。個人的にも結構、切実なテーマです。

栗木さつき氏(以下、栗木):本の冒頭で出てくるのは、「毎日バタバタしているのに、ふと1日を振り返ると何も残っていない」という状況です。きっと会社員の方なら「あるある」だと感じられる場面だと思います。次のように書かれています。

 1日の終わりに時計に目をやり、「いったい時間はどこに消えてしまったのだろう?」と途方に暮れることはないだろうか。
 ずっとせわしなく働いていたのに、ちっとも達成感がないと思うことは?
 懸命に努力しているのに、「することリスト」は短くなるどころか、どんどん長くなるいっぽうでは? ――『一点集中術』より

――私も夜遅くまでへろへろになるまで働いて、帰り道でふと、「あれ、今日なにやってたんだっけ?」と思うことがよくあります……。

栗木:私も集中して作業ができなかったときはあまり達成感がないまま1日が終わってしまうことがあります。ただ、私のような仕事は、そこまでいろんなタスクに分かれているわけではないので、会社員の方ほどではないかもしれません。

――翻訳者さんの場合、会社員とは違って、バタバタと1日動き回ったけど、結局何の意味もなかった、みたいなことはなさそうですよね。もっとも会社員でも、そんなことばかりだとまずいですが……。

栗木:翻訳作業を進めていれば、基本的に「意味がなかった」ということはあまりないと考えています。翻訳の仕事は、作業をすればするほど、考え、勉強し、知らないことを知っていく仕事ですので。気恥ずかしい言い方ですが、「毎日が勉強だ」とは本当に思っています。本があまり売れずに悲しい思いをすることはあっても、その1日が無駄になったと感じることはありません。

――仕事を通じて勉強できるのはすばらしいですね。

栗木:そうですね。仕事じゃなければ、これほど難しい本を読んだり、科学の論文を調べたりすることはないので、自分の成長につながっていると感じています。

自分の仕事はブルシット・ジョブではないか?

――近年、ホワイトカラーの仕事の多くが「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」ではないか、という指摘もありました。毎日必死にがんばってはいるようで、じつは何の意味もない仕事に膨大な時間を使ってしまっているのでは、と頭をよぎったりもします。

栗木:だからこそ、自分にとって本当に大事な仕事を見きわめて、「一点集中」で力を注ぐことが大切なのだと思います。本書では、「最も大事な少数のタスク(バイタル・フュー)」を明確にして、後回しにできることと区別しなさいと言っていますよね。

 そのうえで、「最重要のタスクをすべて終えたら、後回しにしたタスクを再度、見なおす。そして、着手すべきタスクなのか、あるいは、そもそも不要なタスクなのかを見きわめる」とも言っています。

――自分でも「忙しい、忙しい」と言いながら、返信してもしなくてもいいメールに何十分もかけてしまうことがあります。そんな“やってる感”がある雑務こそ、じつは仕事ができない人ほどハマる「超余計なこと」なんだと思います。

栗木:結局、やることを絞って「一度に一つ」を徹底することがベストです。訳していて、その大切さを何度も思い知らされました。

(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)