「わずらわしさ」の
軽減は限定的

 これに対して各社が推進するのが、ICカードや携帯電話を自動改札機にタッチするだけで乗車できるチケットレスサービスだ。東海道新幹線の「EX-ICサービス」、JR東日本の「モバイルSuica特急券」など2000年代後半からチケットレスサービスは存在したが、多くの利用者にとって身近になったのはコロナ禍以降だろう。

 チケットレスサービスは従来のきっぷとは異なり、乗車券と特急券が一体化した商品である。例えば、新宿駅から大阪まで移動する場合、通常のきっぷは東京都区内~大阪市内間の乗車券と、品川~新大阪間の特急券で構成されており、乗車券・特急券単位で区間変更や払い戻しが可能だ。一方、チケットレスサービスは品川~新大阪間の指定列車のみ有効で、乗り継ぎや途中下車はできず、新宿~品川間と新大阪~大阪間は別途運賃が必要になる。

 乗車区間と発売する会社が一致しないことがあるのもややこしい点だ。東海道新幹線、山陽新幹線、九州新幹線はJR東海の運営する「EXサービス」でチケットレスサービスを提供しているが、JR西日本とJR九州の予約サービスでは取り扱っていない。「e5489」で購入可能な新幹線のチケットレス乗車券は、JR東日本が提供する北陸新幹線の「新幹線eチケット」だけだ。

 そして、全国共通の紙のきっぷとは異なり、チケットレスサービスはそれぞれ独立しているため、複数路線をまたいでチケットレス乗車する場合、区間ごとに異なるネット予約サービスを利用する必要があった。今回の4社連携はまず、この垣根をなくそうというものである。

 ただ、上述の「わずらわしさ」がどれだけ軽減されるかというと、非常に限定的と言わざるを得ない。

 プレスリリースに記された「想定するサービスのイメージ(ネット予約サービス間のシームレスな遷移)」には、仙台から名古屋まで新幹線を利用する場合、現在は「えきねっと」にログインし仙台~東京間を購入、続いて「EXサービス」にログインして東京~名古屋間を購入するが、連携後は「えきねっと」から「EXサービス」にログイン認証不要で直接遷移し、シームレスに購入できるとある。

 また、「想定するサービスのイメージ(他ネット予約サービスの予約情報の表示)」については、現在は「えきねっと」と「EXサービス」それぞれの画面で予約列車の情報(乗車駅、列車名、座席など)を確認する必要があるが、将来はひとつの画面で確認できるようになるという。