まず、不機嫌な人への対応の方針は「できるだけ満面の笑みを浮かべながら近づき、相手の気分がよくなるようなポジティブな言葉を自分から投げかける」というものです。
「そんなことで変わるわけないだろ」という声が聞こえてきそうですが、順を追って根拠を説明していきます。
具体的な声かけとしての「魔法の一言」は「いやぁ、清々しい日ですね。こういう日は自然と気分が盛り上がります」です。
「そんなことかよ」と思った方、もう少し待ってください。この「魔法の一言」は、先ほどの対応の方針、つまり「ポジティブな言葉」と「笑顔」と「自分から話しかける」の3点を含む声かけを指します。
したがって、雨の日なら「いやぁ、雨の日は、街路樹がイキイキとしているように見えますね」となりますし、不機嫌な人が野球好きなら「昨日の大谷のホームラン、完璧な当たりで見ているだけでスッキリしましたね」でもいいでしょう。
相手が少しでもポジティブな気分になれそうなことを、こちらが先にニコニコしながら話していると、相手もそのうち自然と笑顔を見せるようになってくれます。
これを心理学では、「笑顔の返報性」と呼んでいます。
私たちは、ニコニコしている人を見ると、つられて笑顔になってしまうという性質があります。笑顔には笑顔が返ってくるので、「返報性」と呼ぶのです。
不機嫌な人からは
あなたも不機嫌に見える?
ひとつ面白い研究をご紹介します。
オランダ・アムステルダム大学のアニーク・ヴルクトは、デパートやスーパーに男性のアシスタントを送り込み、買い物客639名に「動物愛護の募金をお願いできませんか?」と声をかけさせました。
ただし、男性アシスタントはある買い物客には笑顔で近づき、別の買い物客にはできるだけ無表情で声をかけるようにあらかじめ指示をしておきました。
別のアシスタントが少し離れたところから観察したところ、笑顔で話しかけられた買い物客は64.9%が笑顔を見せてくれました。かなりの高確率で笑顔には笑顔が返ってきたことになります。無表情で声をかけられた買い物客では64.7%が無表情でした。無表情には無表情が返ってくるようです。
また、募金に応じてくれたかどうかも調べてみると、笑顔で近づいたときには51.3%が快く募金に応じてくれ、無表情で近づいたときには募金に応じてくれたのは29.3%でした。