こう考えてみると見え方が変わるかもしれません。
不機嫌な人からはあなたも不機嫌に見えている――。
あの人は不機嫌な人だからという前情報が顔に出てしまっていませんか。返報性という考え方に則れば、不機嫌な人と皆さんの間で返報性の負のループが作用している可能性があります。
まずは、自分の行動を変容させることで、負のループを正のループに変えることを考えてみることをオススメします。だから、不機嫌そうな人には「ポジティブな言葉」を「笑顔」で「自分から」投げかけてみるというアプローチが有効となるのです。
さらにもうひとつ付け加えるのであれば、顔の表情だけでなく、できるだけ楽しそうに聞こえる、弾んだ声を出すように心がけてみてください。
声に関しても、やはり「返報性」が起きることも確認されているからです。
ドイツにあるビュルツブルク大学のローランド・ノイマンは、楽しそうな声、悲しそうな声を吹き込んだテープを作り、それを男女15名ずつに聞かせてから気分(ムード)の測定をしてみました。
すると楽しそうな声を聞いた人は、楽しい気分になり、悲しい声を聞いた人は、悲しい気分になることがわかったのです。陽気な声で話しかけるようにすれば、不機嫌な人も少しは明るい気分になってくれるかもしれません。
ここまで説明したら納得いただけたでしょうか。
私たちは、不機嫌な人を見ると、ついついその人とは距離をとろうとします。「触らぬ神に祟りなし」というところでしょうか。
しかし、その作戦はあまりおススメできません。不機嫌な人は、不機嫌な状態のままですから。それよりも勇気を出して、ニコニコしながら相手の懐に飛び込んでみましょう。こちらが明るく接するようにすれば、向こうもこちらの気分の影響を受け、少しは上機嫌になってくれることが期待できそうです。
【参考文献】
※1 Diener, E., Nickerson, C., Lucas, R. E. & Sandvik, E. 2002 Dispositional affect and job outcomes. Social Indicators Research ,59, 229-259.
※2 Neumann, R., & Strack, F. 2000 “Mood contagion” The automatic transfer of mood between persons. Journal of Personality and Social Psychology ,79, 211-223.
※3 Vrugt, A. 2007 Effects of a smile reciprocation and compliance with a request. Psychological Reports ,101, 1196-1202.