──干物以外の商品ではどんなものが?

東海 干物をきっかけにさまざまな相談を受け、他の商品も開発し始めました。

 例えば「梅魚(うめうお)」は、サイズが小さかったり取れ過ぎたりで廃棄されていたマイワシやブリを、梅干し作りの過程で生まれ使い道がなかった梅酢に漬けて加熱調理した商品。クエン酸により骨まで軟らかくなり、ご飯のお供にピッタリです。

 富山湾の海洋深層水を使った天日塩も作るようになりました。海洋深層水は太陽光が届かない深度にあるため清浄性が高い上、富山湾の深層水はあまり循環しないので、ミネラルがたまり続けています。その水をくみ上げて非加熱で水分をじっくり蒸発させることで、天日塩はミネラルを豊富に含んでいます。

──開発に当たって壁はありましたか?

東海 一つは開発資金です。最初に地銀さんに相談に行ったら「漁業者には貸せない」と言われて驚きました。そこで、新湊信用金庫さんに行ったら「地元で頑張っている企業を応援しないわけにはいかない」と担当者が汗をかいてくれ、融資してくださったのです。以来、初めて金融機関を信じてもいいかな、と思い、仕事の相談もするようになりました。

 漁師が6次産業化に関わることに対して地元の反発を買い、大人のいじめのようなことを受けたこともありましたが、世代交代もあり、そういう声も少なくなってきました。

 今の最大の課題は「販路」です。県内ではホテルなどに卸していますが、県外への販売チャネルはオンラインショップが主。その他の販路を開拓していきたいと考えています。

──今後の抱負を教えてください。

日本初のカニの干物に、未利用魚の加工 富山の水産業に新風を吹き込む富山湾で取れる新鮮な魚介を加工した「越のひもの」や「越の干蟹」はIMATOの代表商品。観光船では海から富山湾の美しい景色を楽しめる

東海 水産物の加工業を始めたとき、「斜陽産業だからやめておけ」と言われたこともありましたが、最新の技術を使えば、今までにない魚の価値を生み出せると信じています。

 また取れ過ぎた未利用の魚を加工用に仕入れることは魚の値崩れを防ぐことにもつながります。そうすれば漁師や仲買いの利益が増えますし、おいしく加工すればお客さまにも喜んでいただける。もちろん自社のためにもなるという〝四方よし〟になると思うのです。そういうビジネスの仕組みを作っていきたいです。

 ちなみに、弊社では、所有する漁船を使って富山湾の魅力を海から体感していただく観光事業も行っているのですが、それで目に留まったのか、今年11月に公開される映画『港のひかり』に、弊社の船である第5招福丸が使われることになり、私も漁業の演技指導とエキストラで関わることになりました。こちらもぜひご覧いただけるとうれしいです。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2025年10月号掲載、協力/新湊信用金庫

事業内容:漁業者・魚屋・水産加工業・海上観光業・塩製造事業
従業員数:6人
売上高:1971万円(2025年3月期)
所在地:富山県射水市本町3‐1‐6
電話:0766‐82‐2226
URL:imato.jp