
【ワシントン】ロバート・ケネディ・ジュニア米厚生長官のチームは9月初めまでに、解熱鎮痛剤「タイレノール」の有効成分であるアセトアミノフェンが自閉症の一因である可能性があると米国民に伝えることを決めていた。しかし当局者らはタイレノールにどの程度重点を置くかで意見が分かれており、可能性のある多くの原因の一つとして論じる計画だった。事情に詳しい複数の関係者が明かした。
ケネディ長官が自身の配下の主要政府機関のトップに選んだ3人の医師――ジェイ・バタチャリヤ、メーメット・オズ、マーティー・マカリーの各氏――は、「ロイコボリン」を大きな話題にすべきだと提言した。ロイコボリンは彼らが自閉症の症状を緩和する薬として有望視する知名度の低い後発医薬品(ジェネリック)だ。
しかしケネディ氏はタイレノールの製造企業幹部と面会した後、アセトアミノフェンに力点を置くことを決めた。
ケネディ氏は9月最初の週末にアセトアミノフェンの研究を詳しく調べ、科学者を招集した。タイレノールを製造する米ヘルスケア大手ケンビューのカーク・ペリー暫定CEO(最高経営責任者)を呼び出した後、心は決まった。関係者によれば、ケネディ氏は、ケンビューが示したタイレノールに関する科学的裏付けを不十分なものだと感じ、なるべく早期にアセトアミノフェンのリスクを公表する道徳的義務があると確信するようになったという。
トランプ大統領は、バタチャリヤ、オズ、マカリーの3氏がロイコボリンについて強調することを推奨したにもかかわらず、ケネディ氏の計画に飛び付いたと関係者は明かす。トランプ氏は、全米で31人に1人の割合で子どもが自閉症と診断されている理由となり得るものについて、世界に知らせる機会を歓迎したという。大統領は長年、公の場で自閉症への強い関心を示してきた。
3人の医師の意見は、おおむね一致した。それはアセトアミノフェンに関して女性に警告すべきであり、同薬の取り扱いに慎重になる必要があることが科学的証拠で示されているというものだった。
その結果が、ホワイトハウスで22日に開かれた衝撃的な記者会見だった。大統領は、タイレノールと自閉症の関連についてさまざまな結論が出ているにもかかわらず、妊婦はタイレノールを避けるべきだ(「服用するな」)と明言した。この記者会見は米国の医師と公衆衛生専門家の多くを驚かせ、一部はトランプ氏の行動が危険だと主張した。