
読みやすいメールを書くためのポイントは、漢字と平仮名の割合ではなく、それぞれの「役割」の違いにありました。日本語の特徴を踏まえて、日本語表記の専門家が解説します。 (日本漢字能力検定協会 現代語研究室長 佐竹秀雄)
【誤解】『漢字3割、ひらがな7割』
説の落とし穴
読みやすいメールには、漢字と仮名の使い方が関係しています。ネット上のあるサイトに「漢字が30%、平仮名が70%の文章は視覚的に読みやすい」という解説がありました。もっともらしい説ですが、根拠は書かれていません。そして、この説には根本的なミスがあります。
約40年前、小説、エッセー、手紙文など多種類の文章の漢字比率を調べた報告があります。その結果は、漢字は平均30%弱、平仮名は平均60%強でした。足しても100にならないのは、10%近くの片仮名があったからです。
日本語の文章には漢字と平仮名だけでなく、片仮名も使われています。近年はアルファベットの語も少なくありません。ですから、「漢字30%、平仮名70%の文章」は現実には考えられません。
読みやすいメールを書くのに、漢字と仮名のバランスは大切です。しかし、それは割合のことではありません。漢字と仮名の使い分けによるバランスがポイントなのです。
英語では、単語と単語の間にスペースがあります。スペースで単語を区切っています。この書き方を分かち書きと言います。
これに対して、日本語では分かち書きをしません。文章を読むときは、まず単語を認識します。分かち書きなら、単語を確実に識別できるので読みやすいはずです。それなのに、なぜ日本語では分かち書きをしないのでしょうか。
