小林 例えば自転車が歩道を通るときの「徐行」速度ですが、警察はブレーキをかけたら50センチ以内で止まれる速度(※警視庁の公式サイトには、おおよそ8~10キロ程度と記載)を計測しています。だけど国会の答弁では昭和53年に1回だけ、政府が国会議員から質問を受けて、公式の委員会の場で「自転車の徐行というのは時速4~5キロ」と答えちゃってる。これが訂正されたことは一度もありません。
矛盾する法律が共存する
道交法の大問題
佐藤 うーん。たしかにお話を聞いてると、私たち一般市民からするとルールが曖昧で、ややこしい感じがしますね。
小林 他にも、道路交通法第26条‐2第2項には「後ろからくる車を邪魔したらいけませんよ」という法律があります。急に割り込んだりすると危ないから、進路妨害したらダメですよって法律なのですが、では路上駐車をしている車を避けるため、自転車が右側(車道側)に進路を変えた場合はどうなるか。これは急な飛び出しはもちろんダメなのですが、後ろを走る車は自転車の存在が見えているわけで、ブレーキを踏むなり距離を取るなりはしてくださいよと。
小林 来春の4月からは、車が自転車を抜くときに距離を取るなど、自転車に配慮を求める法律が施行されます。矛盾するような法律が存在していたり、ルールの中に「例外」がたくさんある。日本の道路交通法というのは世界で一番、複雑怪奇なんです。
佐藤 一方通行でも自転車だと逆走できる道が多かったり、今の交通ルールはゴチャゴチャしてる感じはしますよね。今回の青切符の対象になっているような「スマホは絶対ダメ!」「踏切の無理な横断は危ない!」みたいなルールならわかりやすいのですが……。
小林 官民協議会の中では今、「ライフステージ別の教育」が議論されてて、小学生にはここまで教えよう、中高生にはここを重点的に教えよう、そういった議論もされています。だけど私は、そういった教育に頼らなくてはいけないような(複雑な)法律そのものが問題だと考えています。もっとシンプルにしていくべきです。