賃金格差がなくならないのは
男性のほうが長く働いているから

 もう少し、確度の高い確認の仕方としては、回帰分析(編集部注/色々な条件のうち「この条件だけが変わったら(説明変数)、結果がどう変化するかを一次方程式で確かめる統計学の手法)の説明変数として、従業員の基本属性に加えて年間労働時間(または残業時間)の対数を追加することだ。

 労働時間が長い人ほど昇進スピードも速く賃金も高いという関係があれば、年間労働時間を説明変数に加えることで、男女賃金格差は縮小する。

 例えば、年間労働時間を挿入する前は男女賃金格差は15%だったのに、労働時間を説明変数に入れただけで、男女賃金格差が5%に低下したとすると、その差の10%は労働時間の男女差で説明できたことになる。

 図表5-2は、かなり古いデータで恐縮だが、ある企業H社の2005年から2013年までの人事データをもとに回帰分析を用いて導出した、未婚の男女間の賃金格差だ。

図表5─2 未婚者間の男女賃金格差(製造業H社における事例)同書より転載 拡大画像表示


「ベースモデル」では、年齢・学歴・勤続年数・評価年度を統制している。つまり、同じ年齢・学歴・勤続年数の未婚男性と未婚女性の間に平均して約16%の賃金格差が存在する。

「+ジョブグレード、職能等級」は、追加して職位・職階を統制した男女賃金格差だが、「ベースモデル」から半分ほどに縮小している。

 このことから「ベースモデル」の格差のうち半分ほどは、女性の昇進の遅れ、職種の違いによって発生していると説明することができる。