そりゃ格差広がるわ…「日本型不平等社会」を作った“真犯人”の正体とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

日本最大の労働組合の全国組織である連合は、今年の平均賃上げ率は5.46%であると発表した。これは1991年の5.66%以来の高水準だが、今の日本で景気回復や豊かさを実感できている人は少ないだろう。90年代以降、日本に格差が広がったのはなぜなのか。その原因を紐解いていく。※本稿は、前田裕之『景気はなぜ実感しにくいのか』(ちくま新書)の一部を抜粋・編集したものです。

「脱成長」でマイナスなら
立場の弱い人にしわ寄せがいく

 低成長期の日本が成長率を1%引き上げるのは至難の業であるのは確かだが、GDP統計を確認できる1956年度から2023年度までの68年間のうちマイナス成長を記録した年は9回だけである。この間、毎年ゼロから風船を膨らませる作業を始め、年間の最大記録を更新し続けているのだ。

 風船を膨らませる担い手が減っているにもかかわらず、記録を更新している状態を「それなりの結果を残している」とプラスに評価しても良いのではないか。

 もう無理に風船を膨らませなくても良いという意見もある。環境問題を資本主義経済と結びつけ、「脱成長」を説く論者もいる。しかし、現在の経済の仕組みのまま、風船を膨らませる努力をやめたらどうなるか。

 仮に風船の膨らみ方を前の年に比べて10%小さくする(=マイナス10%成長になる)としよう。作業量が減るので、労働時間を減らすか人員を減らして対応するしかない。風船が膨らまなかった分だけ儲けは減る。働いている人たちの取り分は減るが、減り方は均等ではない。