男性は競争しながら育ち
競争により力を発揮することが多い

 男性は子供の頃から競争が好きだ。男性読者もしくは男の子を持つ母親の読者は、「誰が一番早く山のてっぺんにたどり着けるか」「誰が一番早く給食を平らげるか」「誰が一番大きな魚を釣り上げるか」「誰が一番多く懸垂できるか」などなど、男の子は実にいろんな活動を競争に変えてしまうのが得意だ、ということに共感いただけるのではないかと思う。

 競争に対する選好が男女で異なることも多くの研究が裏付けてきた。前段で紹介したミューリエル・ニーダールとリーゼ・ヴェスタールンドの実験では、3回目のセッションで出来高制とトーナメント制を選択させて計算問題を解かせた後で、4回目のセッションで再度、出来高制かトーナメント制かを選ばせた。

 ただし、その回では実際の作業はなく、セッション1の正答数に基づき賞金が支払われた。3回目と4回目の差は、報酬制度を選択した後で作業をするか、過去の作業に基づいて報酬が決まるかの違いである。

 この場合、自信過剰は両方に同じ影響を与える一方、競争するのが楽しいからトーナメント制を選ぶといった追加的効用は4回目にはない。

 彼らの実験では、3回目に見られたトーナメント制を選ぶ割合の男女差が3回目の73-35=38パーセントポイントから4回目には16パーセントポイントまで縮小したことから、その差が競争に対する選好の男女差によるものと結論づけられた。

 男性は単に競争が好きだというだけでなく、競争によってパフォーマンスが向上することも多い。小学生のかけっこ、大学生の迷路クイズ、いろんな対象にいろんな作業をさせて、1人での作業と複数での競争(大人の場合は、努力に対する期待利得が同じ出来高制とトーナメント制を両方経験させて)、パフォーマンスの変化が男女でどう異なるか明らかにしている(注7、注8)。

注7 Gneezy, Uri, Muriel Niederle and Aldo Rustichini(2003)“Performance in Competitive Environments:Gender Differences”,Quarterly Journal of Economics 118(3):1049-1074.
注8 Gneezy, Uri and Aldo Rustichini (2004) “Gender and Competition at a Young Age”, American Economic Review 94 (2): 377-381.