出来高制は自分の成果だけで報酬が決まり、トーナメント制は他の参加者との競争の結果一番の勝者だけが報酬を受け取る仕組みである(結果によらない参加報酬は全員に支払われる)。

 最初の2つのセッションでは男女の正答数の間に有意な差はなかったが、3番目のセッションでは、トーナメント制度を選ぶ男性が圧倒的に多かった(女性が35%であるのに対し、男性は73%)。

 その主要な要因の1つが男性の自信過剰である。チーム内4名の中で自分は何番目の成績だったと思うかと尋ねたところ、男性4人中3人が一番と回答した。

 自分は成功するだろうと予想する自信過剰な人はリスクを取ることを厭わない。したがって、前述のリスク選好における男女差の理由の1つが、男性の自信過剰であることは明らかだ。

経営陣に女性がいると
リスクが適正化される

 ただし、自信過剰はあくまで非合理的なものであるのに対し、適度なリスクを取ることは経済的に望ましいため、効率的なリスクテイキングと非効率的な自信過剰は明確に区別されるべきである。

 その点で私の研究室の大学院生であるリーヤー・ワンが興味深い研究を行っている。

 彼女は、中国上海・深セン両証券取引所上場企業約6800社のデータを用いて、経営陣構成員のジェンダー多様性指標と特許生産性の間に正の相関があることを示した。

 また、毎年の新規獲得特許と過去の取得特許との間の技術分野の違いを計り、その企業がこれまでの技術分野からどの程度外れた分野に投資しているかも評価している。

 その結果、男性ばかりの経営陣になると、これまでの技術トレンドを外れた新規分野に投資する傾向が表れ、それが特許生産性の低下につながっていることを示した。

 男性経営者は自信過剰のあまり自社の強みのない分野に投資するのに対し、女性が経営陣に入って影響力を高めるにつれ勝算が十分にないリスクは取らせなくなるのだ。経営陣の女性比率を高めることのメリットを説明する1つの重要な発見である。