すると、男性は競争によって成績が上がるが、多くの場合女性は変化がないか、逆に男性と競争すると、成績が下がる場合もある。
女性が出世したいと思える
会社にするためには?
組織の中で働く従業員のインセンティブは大部分競争からきている。私たちの研究(注9)によると、昇進競争のもたらすインセンティブ効果(努力引き上げ効果)は、昇給や業績給が与えるインセンティブ効果よりもかなり大きく、自動車販売会社の営業社員の1人あたり生産性を100万円以上押し上げていた。
ちなみに分析に使用したサンプルの99%は男性である。もし女性が競争を好まないのであれば、従来型の「出世競争」は、女性のやる気をあまり高めないことになる。
女性が管理職に就きたがらないという悩みをよく耳にするが、それは個人間の競争が人事制度の基本になっているからかもしれない。
『男女賃金格差の経済学』(大湾秀雄、日経BP)
女性が競争的な環境を好まない、競争的な環境で男性ほど業績を上げられないというのは女性活躍推進の観点からいうと憂鬱な結果であるが、いくつか制度や政策の立案上有用な結果も出ている。
まず、女性は男性を含むメンバー間での競争では成績が上がらないが、女性だけの競争の場合は、競争環境にプラスに反応する(前出、注7)。
西南学院大学の山村英司教授らの研究でも、ランダムに男女混合と男子戦・女子戦に割り当てられる日本のボートレースでも、女子選手のタイムは男女混合よりも女子戦の方が速くなると報告されている。
もう1つ興味深い結果は、女性は個人では競争を避けるが、チームでの参加になると男女差が大部分消失する(注10)。
ということは、職場においても、個人同士の競争ではなく、できるだけチーム同士の競争で評価や報酬が決まるように人事制度を設計すれば、女性は出世競争に参加しやすくなるのである。
注9 Yang, Bicheng,Tat Chen, Hideo Owan and Tsuyoshi Tsuru(2023)“Incentives fromCareer Concerns in a Contract Package:An Empirical Investigation”,Management Science 70(9):6093-6116.
注10 Healy, A. and J. Pate (2011) “Can Teams Help to Close the Gender Competition Gap?”, Economic Journal 121(555): 1192-1204.
注10 Healy, A. and J. Pate (2011) “Can Teams Help to Close the Gender Competition Gap?”, Economic Journal 121(555): 1192-1204.







