
投資は自分の将来のため
本連載ではここまでの3回で、投資について自発的に考えるために投資信託の組み入れ銘柄まで見る習慣や、ファンドの特徴を統計値で理解することの必要性が問いかけられた。第4回と第5回は筆者が担当する。積立投資について深掘りしていくに当たり、そもそも「投資の意義は何か」について考えたい。
投資は「自分の将来のために行うもの」または「企業や国の経済を助けるもの」だとよく聞く。ただ、金融機関の投信窓販担当者が、このフワリとしたフレーズを顧客と同レベルで話しているのでは心もとない。顧客に対しては、膝を打つような事実を伝え、腹落ちした理解につながるサポートをしてほしい。
まず、投資は「自分の将来のために行うもの」というなら、本当に将来に影響を与えるほどのものなのか。事例を通じて検証してみる。
日本の公的年金は、賦課方式だが一定の積立金を保有する点に特徴がある。当初は老齢人口比率が低く、賃金増による保険料増収もあって給付残余が生じていたため、残余分を積み立てて、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に投資させる仕組みを作ったのである。そこで、GPIFの投資実績を検証しよう。投資によって、国民の将来に関わる年金資産増に貢献したのだろうか。
GPIFは、基本の資産配分パターンに合わせた投資を行っており、2001年の設立以来24年間で、平均投資リターンは年率4.20%、利息や配当累積額55兆円、累積総収益額155兆円を上げ、資産額は249兆円に達した(24年度業務概況書)。「現在、保険料の残余はないが、積立金は過去の保険料の残余が積み立てられ運用により増大している」(厚生労働省24年年金財政検証資料)状況で、インカムゲインを100兆円上回る累積総収益を出しているのだ。差額の大きさを見れば、投資の力に思いが及ぶ。投資は国民の将来に影響すると言ってよかろう。まさにこれこそ、「そうだったのか」と膝を打つような事例ではないか。