ここまで言えばお分かりになるように、離島奪還作戦は陸海空自衛隊が一体となって戦う統合運用が求められる作戦なのだ。その指揮をとるのは、新設された統合作戦司令部ということになる。
敵に島を獲られたら、すぐさま獲り返す。そのための統合運用という考え方は、納税者たる国民に対しても説得力があるかもしれない。政治家も離島奪還作戦の準備を自衛隊に期待している。
しかし、少し待ってほしい。本当に離島奪還作戦は必要なのだろうか。こんなことを言えば袋叩きに遭うかもしれないが、私は離島奪還作戦を金科玉条のように崇め奉る風潮に疑問を感じざるを得ない。
離島奪還作戦が何を意味するか。それは、おびただしい死傷者、つまり最小限の戦闘力しか保有しない自衛隊に相当の被害が生ずるということだ。そのことに触れずに「離島奪還作戦、離島奪還作戦」と連呼している姿は滑稽ですらある。
米軍のアッツ奪還に見る
航空優勢・海上優勢の重要性
離島を奪還するためには、すでに島に上陸している敵部隊の抵抗を弱体化する必要がある。事前に空爆するとしても、殲滅することは難しい。そもそも、敵が島を占拠しているということは、周辺の航空優勢、海上優勢は敵が確保している可能性が高い。つまり、自衛隊の艦や航空機が突っ込んでいっても返り討ちに遭いかねないということだ。
敵が迎え撃つ中で強襲上陸をすれば、多くの自衛官が犠牲になりかねない。もちろん、自衛官は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」と宣誓して入隊しているので、自らの犠牲に尻込みすることは許されない。ただしその結果、本来は他の防衛作戦に投入すべき部隊まで損耗する恐れが高く、結果的にわが国の防衛体制に大きな穴が空くことになる。
この観点から、被占領島嶼奪還のため強襲作戦により敵前上陸を強行するという判断が軍事的合理性の観点からみて適切な判断であろうか、という疑問が常に残る。