数学というのはもちろん古くからある学問です。

 たとえば有名な「ピタゴラスの定理」というのがありますが、ピタゴラスというのは古代ギリシャの人物ですから、少なくとも数千年前から数学というのは学問として存在したわけです。

 中世ヨーロッパにおいては、今でいうところの中等、高等教育にあたる「自由学芸七科」といわれる基礎教科がありました。これはいわゆる基礎教育、教養課程のようなもので、とくに基本的な3学として「文法」「修辞」「論理」と、やや発展的な「算術」「幾何」「天文学」「音楽」の4つに分かれます。

 この並びだけ見てもかなり驚くべきことかと思うのですが、中世ヨーロッパでは「算術」(これは今でいう代数学、つまり計算とかのことです)や「幾何」(図形の問題)と同じような並びで「音楽」という基礎教養課程があったということになります。

音楽の譜面は数学的なルールに
基づいて表現されている

 また、音楽で実際に表現されている音、あるいは譜面といったものは基本的には数学的に表現することが可能です。

 音の大きさ、高さ、音色などは基本的に物理量として表現できるので、これらの表現は数学によることになります。

 たとえば今、基準音となるA(ラの音)は440ヘルツの音を指します。これは音波が1秒間に振動する数が440回である、という厳密な数学的定義です。ジャンルによっては442ヘルツを基準音のラとする場合もあります。基準が440であったり、442であったりするのは、この440という数字そのものには意味がないということです。

 これらはあくまで人間がその振動数をAという音だと定義したというだけのことです。基準音のラを440ヘルツとしたとき、そこから1オクターブ上のラの音は880ヘルツということになります。倍の振動数を、同じ音(同じ音の1オクターブ高い音)と定義するわけです。

 我々が今、最も一般的に使っている音律(音の高さに関するルール)は「12平均律」といいます。ピアノの鍵盤を見ればわかりますが、ラの音から1オクターブ上のラの音まで白鍵と黒鍵を合わせて12個の鍵盤があります。