「お金は大切だけど、お金ばかり考えて一生を過ごしたくない!」
物価上昇、株価変動など、お金の不安が尽きない時代。どうすれば、自由に豊かに生きられるのか? 娘のために「お金と投資」のアドバイスを綴った人気ブログを書籍化したのが『改訂版 父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』(ジェイエル・コリンズ著)だ。投資歴50年を通じて「経済的自立=人生の選択肢を持つこと」と説く著者が、時代に左右されない投資戦略と人生哲学を紹介している。
作家の橘玲氏は「お金持ちになるには、シンプルな方法がひとつあるだけ。あなたはなぜ、それをしないのか?」と評し、『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルは「美しくシンプルな本だが、人生に深い影響を与える」とコメントを寄せている。約10年ぶりに改訂となるベストセラーの本書から、その内容の一部を特別公開する。

会社の奴隷にならないために
私が25歳のとき、なんとか5000ドルという大金を貯めました。大学を出たあと、職業と呼べる仕事に初めて就き、最低賃金で2年間働きました。その5000ドルは、年俸1万ドルで2年間働いた結果です。
しかし、私はそこで旅に出たくなりました。何カ月かヨーロッパを放浪したくなったのです。しばらく休職したいと上司に相談しましたが、そんなことは珍しかった頃で、上司は認めませんでした。
労働条件を交渉することなど思いもよらない時代でした。休暇を願い出ても、雇用主がダメだと言えば、それで終わりです。
仕事自体は希望どおりのものでしたし、次の仕事を見つけるのはとても難しいとは思いましたが、私は1週間考え抜き、仕事を辞めることにしました。とにかくヨーロッパに行きたかったのです。
すると、風向きが変わりました。上司が「慌てて決めないで。オーナーと話してみるよ」と言いました。騒ぎが収まってみると、私は6週間の休暇を勝ち取り、自転車でアイルランドとウェールズを旅することになったのです。
交渉してどうにかなるとは思っていませんでしたが、私はすぐに理解しました。
その後、毎年1カ月の休暇を要求し勝ち取りました。翌年はギリシャに行きました。5000ドルがあったことで旅行ができただけでなく、交渉もできるようになったというわけです。
私はもう会社の奴隷ではありません。
仕事と人生を自由にするのは、
「会社に縛られないお金」だけ
その後、私は4回転職し、一度はクビになりました。次の仕事に就くまでの間、短いときは3カ月、長いときは5年間、仕事から離れました。
目的は新しいキャリアに移ることや事業買収、旅行などさまざまです。なんの計画もなく、過ごしたこともあります。
当時、私の月給はありませんでしたが、妻と話し合い、妻も仕事を辞めて家にいることにしました。
よい考えだと思いながらも、これは妻には難しい決断でもありました。彼女も子どもの頃から働いていて、働くことが好きでした。働いていないと、自分が家庭に貢献していないと感じていたのです。
私は言いました。「私たちには『会社に縛られないお金(F-You Moneyの訳。いつでも仕事を辞められるための資金)』がある。
いい車や大きな家を買おうとは思っていない。君は仕事を続けてお金を稼いで、何を買おうというのかい? それよりも娘と一緒に家にいるほうが貴重だと思わないか」
こう考えると、決断は容易です。妻は仕事を辞めました。これは私たちにとって最高の「買い物」でした。
これで私たちは完全に無給になりました。結局、3年間、2人とも仕事はしませんでしたが、その間に、私たちの資産は増加したのです。
このとき、「会社に縛られないお金」によって、経済的な自由を獲得したのだと気づきました。
(本稿は、『改訂版 父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』を一部抜粋・編集したものです。書籍では「会社に縛られないお金」を築き上げた、具体的な投資法を紹介しています)
ファイナンシャル・ブロガー(ブログ「jlcollinsnh.com」主宰)
1975年から投資を行っている個人投資家。何度も転職する中で、収入の範囲内で生活するようになり、気がつけば夫婦どちらも働かなくても暮らせるようになっていた。実践したのはシンプルな投資だけ。収入の半分を投資、借金をしない、バンガード創業者ジャック・ボーグルの教えに従ってインデックスファンドに投資する。これだけで経済的自由を手に入れた。
2011年、娘宛てに「お金と投資」についての手紙をしたためる。その内容をブログに発表すると、世界中から注目されるようになる。