「おトキを幸せにする武士になる」司之介(岡部たかし)、落ち武者になってでも“父の務め”を果たす〈岡部コメント付き・ばけばけ第9回〉

辻斬り!? 司之介、落ち武者になる

 見合いの支度をする貧しい家の中、障子がいい感じに黄ばんだのと白いのがランダムになっていて、張り替え感があり、それによって差し込む光に濃淡がつく。貧乏なのに美しさが演出されている。

 司之介の姿が見えず、昔から1度失敗すると怖気づくクセがあるとフミと勘右衛門(小日向文世)が噂している。さばにあたって二度と食べなくなったというフミに「さばなあ」と相づちを打つ勘右衛門。でも「わしがおる」と頼もしい。

 雨清水家に向かうと、すでに司之介がいた。その姿に勘右衛門は「辻斬りに遭ったのか!」と顔色を変える。

 司之介は床屋で髷(まげ)を落とし、ざんばら頭で落ち武者のようになっていた。

「髷は武士の魂ぞ!」と責める勘右衛門に司之介は「おトキを幸せにする武士になる」と返す。

「うれしいね。ね。ね」とフミはトキに語りかける、トキもうるうる。ここが第4回に次ぐ、松野家の絆回。貧しくても家族がそろっていることが幸せというハートウォーミングな展開だ。

 司之介は堂々と頭を振って顔を覆う髪をばさっと後ろに流し、見合い相手を迎えると――。

 見合い相手の山根家は髷と裃(かみしも)だった。

「切るんじゃなかった」とへなへなと床に座り込む司之介。

「まさに落ち武者じゃ」と勘右衛門。

「申し訳ありませんうちの落ち武者が」と傅。

 くすくすくす ははははは と笑いに満ちる見合い部屋。

 それを控えの間で聞いていたタエは「司之介殿がつとめを果たしたようですね」と言う。

「あとはおトキ、しっかりお茶をお出しするだけよ」

 トキは再び「狐と狢(ムジナ)、狐と狢」とからくり人形の動きで歩き出す。

「みごとなまでに変わらないわね」とタエを感心(あきれ?)させたトキだが、部屋の前で躊躇してしまう。

 怪談好きで怖いもの好きのトキが怖がっていた。

「開けたら、しっかりお茶を出してきたら祝言が決まってしまいそうで」

 トキに代わってフミが襖を開ける。

 見合い相手の銀二郎(寛一郎)と目がばっちり合って――。