
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第6回(2025年10月6日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
父のようになりたくない。
明治19年(1886年)、18歳になったトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)は積もりに積もった家の借金を返済するために婿をもらう決意をする。
さっそく恋占いをしに八重垣神社に行ったものの、トキの舟はなかなか沈まない。
占いの概要は第5回で説明されていた。お金を乗せた紙を舟に見立てて池に浮かべる、沈む時間と岸からの距離でお相手がいつ現れるかを占うのだ。筆者は京都の貴船神社(丑の刻参りの発祥の地と言われる)でやってみたことがある。
「すごい頑丈」
一緒に来た工場仲間のチヨ(倉沢杏菜)とせん(安達木乃)は先に舟が沈み、トキの舟が沈むのを待ちあぐね、あやとりをはじめる始末。
ようやく向こう岸に沈んだのに気づいて、なかには沈まない人もいるとトキを慰めるが、全然慰めになっていない。
トキはむすっとした顔をしている。眉、目、口、それぞれのラインがかすかに下がっていく。そのかすかさがCGのように精巧。神木隆之介などもそうなのだが、かすかに表情を変化させるのが巧い俳優がいる。高石あかりもそのひとりだと思った。
第2週「ムコ、モラウ、ムズカシ。」(演出:村橋直樹)のはじまりは、恋占いの無残な結果からはじまった。が、続くタイトルバックは、幸せそうなトキとヘブン(トミー・バストウ)の2ショットの連打なので、こうなるのだと思えば、安心。あと数年待つのだトキ。
八重垣神社から帰宅して、相変わらず、ろうそくの明かりで質素な夕食。
トキはショックが癒えず、茶わんを持ったまま固まっている。
「信じるのは自分だけ。そうすればわしのように堂々と生きられる」
司之介(岡部たかし)に励まされ、「父上のようになりたくないの」とばっさり。幼い頃は「父はダメじゃない」とあんなにかばっていたのに。