
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第8回(2025年10月8日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
貧乏脱出大作戦
「はじまったわねえ貧乏脱出大作戦」とはしゃぐのは蛙(木村美穂)。「言い方」とたしなめるのは蛇(渡辺江里子)。
蛙と蛇がこの時代のお見合いは男性主体で、女性はお茶を出す一瞬しか参加できなかったと説明してくれる。
お見合いする女性にお茶を運ばせて、重大な話は男性同士でするとはなんてナンセンスなんだろう。女子社員がお茶を出すものという偏見(?)は、こういう悪しき習慣の名残なのだろうか。
この時代、見合いとは家と家のものなのだ。
トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)は「狐と狢(ムジナ)、狐と狢……」とからくり人形のように歩いて見合い会場につくと、楚々とお茶を出す。その瞬間、お互いが横目で品定め。
中村守道(酒井大成)「悪くない」
トキ「良き。小豆洗いには似ていないけど良き」
一瞬でお互いが相手の顔を見てジャッジする。まるで居合斬りのような素早さだ。さすがはお互い武士の家系である。
トキはわずかな時間で、スイーツな書き割りの部屋で「あ〜」としじみ汁を飲む新婚生活を想像する。
トキは部屋を出ると、廊下に背中から倒れる。そのまま縁側までずるずると仰向けのまま下がって、大の字でじたばた体を揺する。緊張が一気に弛緩したのだろう。
それを遠くで三之丞(板垣李光人)が理解不能な顔で目撃している。
三之丞は、暇そうにあちこちをぶらぶらしている。トキのことが実はほんとうに気になっているのかもしれない。
この一瞬の邂逅で、お相手はトキが気に入ったか気に入らないか判断し、返事をする。トキが「良き」と思おうが思うまいが、関係なさそうだ。
さて、お見合いは成功するのか――。