行事・イベントの裏側で
子どもと先生に何が起きているのか
華やかなイベントの裏側では、子どもたちと先生たちが想像以上の時間とエネルギーを費やしています。そしてその負担は、教育現場に深刻な影響を及ぼしているのです。
1.「練習」に奪われる、子どもにとって最も重要な時間
運動会で披露される一糸乱れぬ演技、おゆうぎ会で演じられる完成度の高い劇。その裏には、数週間~数カ月にわたる長い「練習」の期間が存在します。子どもたちは、本来であれば自由に遊び、自分の興味を探求すべき大切な時間を、来る日も来る日も同じ動作やセリフの反復練習に費やすことになります。
幼児期の子どもにとって、「遊び」は学びそのものです。ブロック遊びで創造力や空間認識能力を養い、おままごとで社会性やコミュニケーション能力を育む。ケンカをしたり、仲直りをしたりする中で、他者との関わり方を学んでいく。こうした自発的な遊びの中から生まれる「気づき」や「試行錯誤」こそが、子どもの心と知性を豊かに育むのです。
しかし、イベントの練習に追われる日々の中では、この最も重要な時間が犠牲になります。「今日は運動会の練習があるから、お外遊びは少しだけね」「劇の練習をするから、ブロックはまた今度」。そんな言葉が、園のあちこちで聞かれるようになります。子どもたちの「もっと遊びたい」「あれをやってみたい」という内なる声は、イベントを成功させるという『大人の目標』の前にかき消されてしまうのです。
2.「質の高い保育」を不可能にする、先生たちの疲弊
イベント準備の負担は、先生たちにも重くのしかかります。ダンスの振り付けを考え、劇の台本を書き、きらびやかな衣装や大道具を夜なべして作る。子どもたちの練習を指導し、全体の進行を管理する。その業務は、もはや教育者の仕事というより、イベントプロデューサーのそれに近いでしょう。
先生たちがイベント準備に忙殺されることで、失われるものがあります。それは、ひとりひとりの子どもとじっくり向き合う時間です。