本来、保育のプロである先生の役割は、子どもたちの何気ないひとことや行動にアンテナを張り、その子の興味や発達段階に合わせた適切な働きかけをすることです。
例えばAちゃんがダンゴムシをじっと見つめているのに気づいたら、「この虫眼鏡で見てごらん。足がたくさんあるのが見えるよ」と興味を広げる手助けをする。BくんとCちゃんがおもちゃの取り合いをしていたら、それぞれの気持ちに寄り添い、解決への道筋を一緒に考える。こうした日々の丁寧な関わりこそが、質の高い保育の根幹です。
しかし、先生の頭の中が「運動会まであと2週間しかない、どうしよう」「衣装がまだ全員分できていない」といったことで埋め尽くされていては、目の前の子どもの小さな変化やサインに気づく余裕はありません。保育は表面的で画一的なものになり、子どもたちはただ「管理される」対象になってしまいます。先生たちは日々、目の前の業務に追われるばかりで、気づきや学びを与えられるような、質の高い保育を提供することが物理的に困難になるのです。
行事・イベントの回数が少なくても
子どもの成長を知る機会はある?
こうした問題意識から、私が運営するSora International Preschoolでは、保護者の方に成果を披露するためのイベントを、年に1回の「ミュージックリサイタル」だけに限定しています。
「イベントが少ないなんて、子どもが可哀そう」「思い出が作れないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、私たちはその逆だと考えています。イベントを最小限にすることで生まれた時間と心の余裕を、子どもたちの「日々の成長」と「学びの深化」に最大限に注ぎ込んでいるのです。
大切なのは、運動会やおゆうぎ会といった非日常の「ハレの日」ではありません。なぜなら子どもの成長とは、イベントの日に劇的に起こるものではなく、毎日の生活の中での小さな発見や成功体験の積み重ねによって、少しずつ、しかし確実に育まれていくものだからです。