「切られる存在」から
「必要とされる存在」へ
重要なことは、「この会社にしか頼めない」と認めてもらえる存在になることです。
埼玉に拠点を構える製造業の1社が、その好例です。社員数百人規模の中小企業ですが、極めて高精度の部品をつくる製造技術を持っているため、取引先からは下請けではなくパートナーとして遇される「必要不可欠な存在」になっています。この会社は、日本だけでなく海外の取引先からも一目置かれています。
だからこそ私は、「下請けなんかになるな」とよく申し上げています。経営コンサルタントの大先輩・一倉定先生も同じことを強調されていました。
下請けは立場が極端に弱い。例えば、社内のパートやアルバイトであっても辞めてもらうときには面談して説明しなければなりませんが、下請け企業を切る場合は発注の電話をしなければいいだけです。
そのような不安定な立場に甘んじていては、安定した経営は成り立ちません。自社のポジションを常に見直し、「切られる存在」から「必要とされる存在」へ進化していく努力が欠かせません。
外部環境はかつてないほど厳しさを増しています。人口減少は止まらず、国際競争も激化し、トランプ関税の影響で取引先の大企業が米国へ移転する可能性すらある。こうした時代に「下請けだから守ってほしい」と訴えるだけでは未来を開けません。
経営の本質は「守られること」ではなく、「選ばれること」にあります。
中小企業が目指すべきは、発注元にとってなくてはならないパートナーになること。そのためには技術力やサービスを磨き、そのことを通じて社員のプライドや社員の働きがいを高め、顧客から真に信頼される企業へと成長していく。その努力を続けた企業こそが、厳しい現実を直視しながら未来を切り開いていけるのです。