
実は、認知機能が衰えやすい人、つまり認知症になりやすい人の会話スタイルには“共通点”があった――。延べ1万人超の会話を分析してきた理化学研究所革新知能統合研究センターのチームディレクターで、『脳が長持ちする会話』の著者である大武美保子氏は、「ありがちな話し方、聞き方が脳神経ネットワークのトラブルを招く」と警鐘を鳴らす。どんな話し方が脳の老化を招くのか。「脳の健康度」をアップする効果的な方法とは。大武氏に話を聞いた。(ライター 西川敦子)
「最近、物覚えが悪くなった」
中年期に気になる脳の健康
「最近、物覚えが悪くなった気がする」「将来、親のように認知症になるかも」――。
中年期に入ると気になってくるのが、脳の健康だ。脳の状態は体と違い、外側からはなかなかわからない。しかし、「実はあるものを観察すると見えてきます」と理化学研究所革新知能統合研究センターチームディレクターの大武美保子氏は打ち明ける。
「あるものとは『会話』です。これまでの脳科学の研究から、日常会話には認知機能の状態が反映されていることがわかっています。
脳と会話の関係は、いわばハードウエアとソフトウエアのようなもの。スマホが故障していれば、アプリもうまく動きませんよね。会話がスムーズに進まなくなったら、脳の健康を見つめ直したほうがいいでしょう」
例えば、次のような現象が起きてはいないだろうか。
・ 人や物の名前が出てこず、「あれ」「それ」が増える
・ 話の途中で言葉に詰まる
・ 物事をうまく説明できない
・ 喋っているうち、何を話そうとしていたのか忘れてしまう
・ 同じ話を何度も繰り返してしまう
誰しも多少は心当たりがあるかもしれないが、頻発しているようであれば注意したほうがよさそうだ。
さらに大武氏は、「会話スタイルで脳の健康度が変わる」とも指摘する。