写真はイメージです Photo:PIXTA
いい医者とは、最新の治療を提案できる人か、それとも患者に優しい人なのか?実は、もっと意外なところで医者としての差があらわれる。『白い巨塔』の里見脩二を手がかりに、東京大学医学部卒の内科医が、名医の見抜き方を教えてくれた。※本稿は、里見清一『患者と目を合わせない医者たち』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
病理解剖がなければ
財前の誤診は発覚しなかった
佐々木庸平の癌の手術は、うまく行ったはずだった。
その後起きた容態の悪化に対して、執刀医財前五郎は術後の炎症と即断し、診察もせずに抗生物質による治療を担当医柳原に指示した。
しかし病状は改善せず、患者は死亡した。死後の病理解剖で、財前が見逃していた病態が死因となっていたことが明らかとなった。
ご存知、山崎豊子『白い巨塔』(新潮文庫)の名場面である。
ポイントとなる「病理解剖」では、患者の死後、遺体そのものを調べるのだが、医学生実習でやる「系統解剖」と違い、体を文字通りバラバラにしたりはしない。大きな手術のように体を切開し、臓器を取り出して状態を確認する。
また一部を保存して後日顕微鏡で詳細に検討する。解剖終了後は手術と同様に縫合するので、服を着せると外から傷はわからない。
近年この病理解剖が世界的にやられなくなった、と米疾病予防管理センターケニア支部のデ・コック博士らは指摘する。原因は様々だが、病理医の「働き方改革」もあるらしい。
『白い巨塔』では病理学の大河内教授が夜中に出てきて執刀しているが、今は夜間休日の病理医呼び出しはほとんどない。







