これは当然で、繰り返すが、解剖しても個々の例では「どうしてそうなったのか」はわからない。他にも同様の所見を示す例があるのか、共通項は何か、それらを解析してはじめて「どうして」に迫り、「どうすればいいか」を考えられる。

 現在の「因果関係不明(1例ベースでは、「不明」に決まっている)」の繰り返しには、因果関係を明らかにしようという姿勢が見て取れない。

病理解剖を申し出る医者は
間違いなくいい医者である

 まずは、ワクチン接種後に亡くなった方は、お気の毒ではあるが、「亡くなっても仕方がない」くらいのご高齢の方を含め、全例病理解剖すべきである。若年死者との共通項を見つけ、そこからの積み重ねがないと、いつまで経っても「不明」のままになる。

『患者と目を合わせない医者たち』『患者と目を合わせない医者たち』(里見清一、新潮社)

 ワクチン接種後に限らず、身内が亡くなって「ご遺体を解剖させてください」と頼む医者に、いい印象は持たれないかもしれない。だが、間違いなくその担当医は科学者の熱意と臨床医の良心を併せ持つ、「いい先生」であると、私が保証する。

 財前五郎自身も、自らの病理解剖を希望した。

『白い巨塔』原作の時代よりも、医学は発達し、調べるべき生物学的知見は増え、病理解剖の意義はむしろ大きくなったとも言える。