働き方が多様化するなか、「定年=引退」というモデルは過去のものとなりつつある。「現役時代のようなフルタイム勤務ではなく、ストレスなく、少ない時間で続けられる仕事があれば……」と考える人も少なくないだろう。では、65歳以降、豊かに暮らすにはどうすればいいのか。そして、定年後の仕事にはどんな選択肢があるのか。本記事では『月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑』の著者・坂本貴志氏にインタビューを実施。仕事の実態を、就業データと当事者の声をもとに紐解いてもらった。(構成・聞き手/ダイヤモンド社書籍編集局、小川晶子)

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短い時間で月10万円は難しくない

――坂本さんはご著書の中で、65歳以降は「小さな仕事」で月10万円を稼ぎ、豊かに暮らすことを提案されています。「小さな仕事」とは、報酬はそれほど高くはないけれど、労働時間が短く、仕事の負荷やストレスが少なく、世の中に必要不可欠で社会に貢献する価値ある仕事を指しているとのことですね。現実にそのような仕事はけっこうあるのでしょうか?

坂本貴志氏(以下、坂本):はい。いま企業も人手不足で、年齢不問やシニア歓迎の仕事が増えています。時給も高くなってきています。

「月10万円を稼ぐ」のを一つの目安として、いくらの時給でどのくらい働けばいいのか考えてみましょう。

時給1200円なら、84時間働けば10万円になります。週になおせば21時間ですね。つまり、週に3日フルタイムに近いかたちで働く、あるいは1日4時間を週5日働けば月10万円稼ぐことができます。

時給1500円なら、67時間で10万円です。週に16~17時間働けば良いことになります。週に16時間ということは、フルタイムなら週に2日でいいわけです。

――週2日で10万円稼げれば、趣味の時間などもたっぷりとりつつ豊かに生活できそうな気がします。でも時給1500円の仕事がそんなに見つかるものでしょうか?

坂本:現時点では多くありませんが、時給1200円くらいの仕事は多く見つかります。いまの最低賃金は1055円(全国加重平均)で、都市部は1100円を超えていますから。東京都の最低賃金は2025年10月から1226円に引き上げられます。人手不足で賃金が上がっていくのは間違いないので、今後は時給1500円も珍しくなくなるのではないでしょうか。

やはり時給水準にはこだわってほしいですね。年を取ったから報酬が安くていいというわけではないと思うんです。この仕事の報酬は内容にきちんと見合っているのか。しっかり見定めて仕事を選ぶのが良いと思います。

短い時間で月10万円を稼げる職種3選

――短めの労働時間で月10万円稼げる仕事として、具体的にいくつか教えてください。

坂本:たとえば「施設管理人」は、平均年収143.9万円で平均労働時間は週27.0時間です。分布を見ると、週に15~21時間働く人の割合が多く、月収10万円くらいの人が多いことがわかります。インタビューさせていただいた75歳の男性は、週5日午前中だけマンション管理人の仕事をされており、収入は月10万円とのことでした。

「介護・保健医療サービス」は、短い時間でそれなりに稼げる仕事です。平均年収は145.3万円で平均労働時間は週25.5時間。ホームヘルパーや施設介護職員、看護助手、歯科助手、柔道整復師助手等がこれにあたり、やはり人手不足で需要があります。資格や経験がなくても、現役の方のサポートをする仕事、助手の仕事は多くあるので検討してみてほしいですね。

ほかにも、学童保育支援や保育補助、旅行・観光案内、広告宣伝員など「その他サービス」として紹介している職種のデータを見ると、平均値は月10万円くらいで、働く時間は短めの人が多いです。