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頑張って働いても給料は上がらず、一部の職種だけが高収入を得ていく。この格差は、個々の努力不足や能力差ではなく、資本主義の構造そのものから生まれている。企業はなぜ儲かっても労働者に還元しないのか?気づかないうちに搾取される産業社会の構造を追う。※本稿は、作家の佐藤 優『愛国の罠』(ポプラ社)の一部を抜粋・編集したものです。
会社が儲かっていても
従業員には還元されない
労働者が得る賃金は、会社が儲かったから多くなる、という仕組みにはなりません。なぜかというと、賃金とは、労働者の生活を成立させるためのお金だからです。
賃金は、基本的に3つの要素からできています。
1つ目は、労働者が翌月に働くエネルギーを蓄えるためのお金です。1人の労働者の衣食住を満たし、休日にちょっとしたレジャーをする。これは商品やサービスを市場で購入するときに必要なお金です。
2つ目は、子育てをするためのお金です。1人の労働者だけだと資本主義は1代で終わってしまいます。だから子どもを作り育てて、労働者として社会に出るまで養育する費用が必要です。これが2番目の要素です。
3つ目は資本主義で起こるイノベーションに対応するために自己教育をする、その教育のお金です。学習費用も賃金の一部なんですね。
こうした労働者一人ひとりが持つのは賃金です。これを放置しておくと、個別資本(編集部注/企業が保有する資本)は1つ目の要素ですら極力切り詰めようとしますし、2つ目、3つ目などにほとんど関心を持ちません。2つ目、3つ目を個別の資本にすべて任せてしまうと、資本主義が持続的に発展しなくなってしまいます。







