
米国の最高権力者であるドナルド・トランプ大統領といえども無視できないのは共和党の意向だ。そして日本政界と同様、共和党にも派閥抗争がある上に、政策実現のための造反も珍しくない。派閥の動向抜きに、米政治の未来は展望できない。特集『トランプ人脈 全解剖』の#6では、共和党で注目の三大派閥とその権力闘争から、トランプ政権の今後を展望する。(共同ピーアール総合研究所主任研究員 渡辺克也)
トリプルレッドの共和党も一枚岩ではない
減税・債務上限引き上げ・歳出削減で激しく対立
米大統領と米議会の上院・下院の全てを制し、「トリプルレッド」の共和党。そんな共和党も一枚岩ではなく、日本と同様、派閥間の勢力争いが存在する。派閥の動向抜きに、米政治の未来を展望することは困難だ。
同じ共和党に属していても、例えば米議会の予算審議で、減税・債務上限引き上げ・歳出削減を巡り、激しく対立している。米国の派閥抗争は、日本よりも政策色が強い点が特徴だ。
トランプ政権は減税・債務上限引き上げ・歳出削減の三つ全てを成立させることを目指しているが、どれか一つでも欠けると、全てが失敗する関係にある。とりわけ債務上限引き上げには「ハウス・フリーダム・コーカス(HFC)」という共和党派閥が、歳出削減には「リパブリカン・ガバナンス・グループ(RGG)」という共和党派閥がそれぞれ反対している。
ドナルド・トランプ米大統領は、思い付きで政権運営をしており、行動を予測することはできないとする見方もある。確かに、大統領権限の範囲内では、そうした一面もあるのかもしれない。
しかし、政治力学から決まっていく要素も相応にあり、その領域を適切に見極める必要がある。共和党の動向を派閥単位で追うことで、トランプ政権の予見可能性を高めることができるのだ。
次ページでは、共和党の三大派閥の主張や重鎮議員の動向から権力闘争をひもとき、トランプ政権の今後を展望する。